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米国の和平案でウクライナに圧力、欧州は独自の対案検討の可能性

2025年11月22日(土)04時52分

米ホワイトハウスの閣議室でトランプ大統領と会談するウクライナのゼレンスキー大統領。2025年10月17日撮影。REUTERS/Jonathan Ernst

Yuliia Dysa Michel Rose Inti Landauro Anastasiia Malenko Lili Bayer

[キーウ/パリ/ローマ/ブリュッセル 21日 ロイター] - ウクライナのゼレンスキー大統領は21日、米国が提示したロシアとの和平案を巡り米国と協力して取り組んでいく姿勢を示した。米国が主導する和平プロセスで「ウクライナの利益を裏切ることはない」と強調すると同時に、向こう1週間で政治圧力が強まると予想される中、ロシアが和平プロセスの妨害を試みる恐れがあるとして、国民に結束を呼びかけた。

米国が提示した28項目の和平案には、ウクライナの領土割譲や軍縮のほか、北大西洋条約機構(NATO)加盟の禁止など戦争終結に向けたロシアの主要な要求の一部が盛り込まれている。トランプ米大統領はウクライナがこの和平案を受け入れる期限は11月27日の米感謝祭が適切という認識を表明。複数の関係筋によると、米国はウクライナに合意するよう圧力をかけるため、ウクライナへの情報共有や武器供給を削減する方針を示している。

こうした中、ゼレンスキー大統領は国民に向けたビデオ声明でウクライナに対し前例のない強い圧力がかかる中、「尊厳を失うか、主要なパートナーを失うリスクを負うか、極めて困難な選択を迫られている」とし、「ウクライナは今、歴史の中で最も困難な時期に直面している」と述べた。

仏大統領府によると、米国がウクライナに和平案を提示したことを受け、仏英独首脳は21日、ゼレンスキー大統領と電話会談を実施。和平案はウクライナが完全に関与し、ウクライナの主権を守り、将来的な安全を保証するものでなくてはならないとの見解で一致した。

複数の関係筋によると、ウクライナと仏英独の4カ国は、米国が提示した28項目の和平案に対抗する独自の和平案を取りまとめる作業を進めている。他の欧州諸国もこの動きに加わる可能性が高いとしている。

また、欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会のフォンデアライエン委員長は21日、EU首脳は23日に20カ国・地域(G20)首脳会議が開かれる南アフリカのヨハネスブルクでウクライナ情勢を協議する会合を開くと発表。「ゼレンスキー大統領と協議し、現状について意見交換した。ウクライナ抜きのウクライナに関する決定はあり得ないという立場を明確にした」と改めて表明した。

ゼレンスキー氏は21日、米国のバンス副大統領とも電話会談を実施。電話会談は約1時間に及び、ゼレンスキー氏は会談後「米国と欧州と協力し、国家安全保障担当の補佐官レベルで和平への道筋を現実的なものにしていくことで合意した」とXに投稿。「トランプ大統領の流血を終わらせる意欲をウクライナは常に尊重しており、あらゆる現実的な提案を前向きに受け止めている」とした。

和平案が協議される中でもロシア軍はウクライナ東部で進軍を続けており、ロシア軍のゲラシモフ参謀総長は20日、プーチン大統領に対しウクライナ東部ハルキウ州の要衝クピャンスクを制圧したと報告。国内ではゼレンスキー大統領の側近を巻き込む大規模な汚職疑惑を巡る捜査が進められており、ウクライナは極めて困難な状況に直面している。

ロイター
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