アングル:為替介入までの「距離」、市場で読み合い活発化 160円警戒とも
写真は円紙幣と米ドル紙幣。3月19日撮影。Reuters/Dado Ruvic
Atsuko Aoyama
[東京 21日 ロイター] - 外国為替市場で円安進行に歯止めがかからない中、日本政府による円買い/ドル売りの市場介入を巡って参加者の読み合いが活発化している。通貨当局から今後の介入の可能性をほのめかすような発言が初めて出されたためだ。心理的節目でもある1ドル160円前後が警戒ラインとの見方もある。ただ、実際には値動きのスピードにも左右されるため、参加者は一段と神経質になっている。
ドルは現在、157円台と10カ月ぶり高値圏で推移。10月4日の自民党総裁選で高市早苗首相が勝利して1カ月で10円ほど円安が進んだ。物価高対策が政権の最優先課題となる中、円安による物価押し上げには懸念の声が出ている。
片山さつき財務相は21日、日米の為替共同声明に触れ、介入も「当然考えられる」と就任後、初めて言及した。
発言後には、ドル/円相場が20銭ほど下押しした。ただ、円を買う動きはここまでで、追随した取引は広がらなかった。
「実際の為替介入にはまだ距離がありそうだ」(あおぞら銀行の諸我晃チーフ・マーケット・ストラテジスト)との受け止めからだ。片山氏の発言には、警戒度が大きく高まった際に使われる「断固たる措置」などの文言が含まれていなかったため、という。
野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストは現在の相場水準について、日米共同声明と照らして介入が近いと判断できる「無秩序な動き」、「過度な変動」との評価には至っていない、と話す。まだ、実弾介入が正当化される状況ではない、との見方だ。
<投機筋の動向見えず>
そもそも、ドルを売る介入原資には限りがあるとの指摘があり、当局は、介入に当たっては、効果的なタイミングを見定める必要がある。投機筋が円売りポジションに傾いたタイミングでの介入だと効果が高まるとの見方が複数聞かれるが、米国政府機関の閉鎖により、投機筋の動向として参照されるデータの公表が遅れ、円売りポジションがたまっているとは裏付けられていない。
9月23日時点を最後に公表が見送られていた米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉報告がようやく再開されたものの、最新の数字は9月30日時点のもので、直近の投機筋の動向は読み取れない。
投機筋のポジション動向を映すとされるIMM通貨先物非商業部門の取り組み状況によると、9月30日時点での円買いポジションは16万7811枚、売りポジションは10万6346枚で、円は6万1465枚の買い越しだった。少なくともこの時点では、むしろ円買いに傾いていた。
<「準備は進めている」と市場参加者>
実際の介入判断は水準だけではなく、値動きの速さなど複合的な要素が関連するとみられている。市場では目安として、心理的節目でもあるドル160円前後が警戒ラインとの見方が広がっている。直近の介入事例では、145円台(2022年9月22日)、151円台(22年10月21日)、161円台(24年7月11日)だった。
「実弾」介入にまだ距離があるとみるあおぞら銀の諸我氏も、片山氏が日米の為替共同声明を持ち出したことを踏まえ「いつでも(介入)できる準備は進めているのだろう」との見方を示し、160円手前で介入があってもおかしくないと身構える。
三井住友銀行の鈴木浩史チーフ為替ストラテジストは、ドル/円の上昇が勢いづいてドルが160円を超えるようなら介入が実施される可能性が出てくると予想。一方、日銀の利上げが容認されると市場が確信を持てれば、ドル/円の値動きは落ち着いてくるとの見方を示している。





