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情報BOX:米中首脳会談、貿易対立緩和で合意した内容

2025年10月31日(金)09時27分

10月30日、トランプ米大統領と中国の習近平国家主席は韓国・釜山で首脳会談を開き、両国間の貿易対立を緩和する措置を講じることで合意した。釜山で撮影(2025年 ロイター/Evelyn Hockstein)

[ワシントン 30日 ロイター] - トランプ米大統領と中国の習近平国家主席は30日に韓国・釜山で首脳会談を開き、両国間の貿易対立を緩和する措置を講じることで合意した。米国が中国からの輸入品に対する関税の引き下げと輸出規制を和らげるのと引き換えに、中国はレアアース(希土類)鉱物と磁石の新たな規制を一時停止し、米国産大豆の購入を再開する。

この合意によってトランプ氏が中国からの輸入品に課すとしていた100%の関税は見送られ、世界の2大経済大国間の微妙な貿易紛争の休戦が約1年間延長されることになった。

合意した主な内容は以下の通り。

<フェンタニル原料の関税を半減>

米国は、麻薬鎮痛剤「オピオイド」の一種であるフェンタニルの原料となる化学物質の中国からの輸入関税を現行の20%から10%へ半減する。トランプ米政権の当局者によると、これで関税率は計約57%から計約47%へ引き下げられる。

この関税率には、トランプ氏が1期目に中国からの輸入品に課した約25%の関税、今年4月に導入した「報復的」関税を半減した10%、および従来からの「最恵国待遇」関税率が含まれる。

計約47%の関税率は、トランプ氏が懲罰的関税を課したインドとブラジルからの輸入品に適用している50%を下回る。

米国が最大の輸入相手国とするカナダは、北米3カ国で結んでいる自由貿易協定(FTA)の「米国・メキシコ・カナダ協定」(USMCA)に準拠しない製品を米国に輸出する場合に35%の関税を課される可能性がある。これは東部オンタリオ州の広告にトランプ氏が激怒し、カナダからの輸入品に10%の関税を上乗せすると脅したのを実行に移した場合だ。

<中国のレアアース輸出規制の一時停止>

中国が今月発表したレアアース鉱物と磁石の輸出規制については1年間凍結することで合意した。自動車や航空機、兵器の製造に不可欠で、中国が米国との貿易対立で最も強力な影響力を行使する手段となっている。中国が発表していた新たな規制は、対象となる元素が拡大され、微量でも含まれる製品には輸出許可証を受けることを義務付け、軍事製品への転用を防ぐ狙いがあった。

ただ、中国の今回の措置は、トランプ氏が4月に表明した輸入品への「相互関税」に対抗するために導入した規制には影響しない。このため、レアアースと磁石に対する一定の監視と影響力を維持できる。

今年夏に米中両国は中国産レアアースの流通を維持するための審査・出荷手続きで合意しており、これらの手続きは延長されている。

<米は輸出規制を一時停止>

米国は、半導体製造装置の輸出を含めた米国製ハイテク製品の中国への輸出禁止拡大措置を1年間凍結することで合意した。この規制強化は、子会社や関係する企業を利用して規制を回避する行為を禁止することを主目的としている。

新たな規制では、既に規制対象となっている企業が株式の過半数を所有する企業も自動的に規制されることになり、影響が最も大きい中国企業数千社への輸出が禁止される予定だった。

<中国、米国産大豆購入を約束>

ベセント米財務長官は、中国が本会計年度(2025年2月―26年1月)に1200万トンの米国産大豆を購入することで合意し、その後の3年間に毎年2500万トンを買うことを約束したと発表した。

中国は9月に米国産大豆の購入が皆無となり、今年秋には買うのをほぼ取りやめ、代わりにブラジルとアルゼンチンから調達していた。この動きはトランプ氏の重要な支持基盤である米国の農家に経済的打撃を与えることで、中国が貿易交渉を有利に運ぶ効果をもたらした。

しかしアナリストらは、中国が今回約束した米国産大豆の購入は、以前の購入量と同水準に戻すのに過ぎないと指摘する。米国は24年、中国に対して2700万トン弱の大豆を輸出した。中国は20年の第1次トランプ政権との「第1段階」貿易合意で大豆購入を大幅に増やすことを約束したが、新型コロナウイルスの流行を受けて購入量は目標を下回っていた。

<トランプ政権、新たな港湾使用料を一時停止>

トランプ政権は中国で建造され、中国が所有する中国船籍の船舶に対する新たな港湾使用料の徴収を1年間停止することに合意した。この使用料は、米国の港湾へ航海するたびに数百万ドルのコスト増となる可能性がある。この使用料は、造船・海上輸送・物流分野の世界市場で中国が持つ支配力に対抗し、米国の商用造船業を活性化させる目的で導入された。中国製岸壁クレーンへの100%の輸入関税とともに今年10月14日に発効した。

使用料は貨物輸送の流れを直ちに混乱させ、荷主が中国関連の船舶を避ける動きはコンテナ運賃を押し上げている。中国も対抗し、米国側の出資比率が25%以上の海運世界大手を含めた米国関連船舶に対して独自の使用料を課している。

ロイター
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