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インタビュー:高市新首相、人事で安倍内閣を参考か=双日総研・吉崎氏

2025年10月21日(火)18時04分

 双日総合研究所の吉崎達彦チーフエコノミストはロイターとのインタビューで、高市早苗新首相(写真)の政策は「分配よりも成長を重視しており、市場関係者の期待は高い」との見方を示した上で、「政務担当の首相秘書官に前経済産業次官の起用が報じられるなど、人事面では(経産省人脈を重視した)安倍晋三内閣を参考にしている可能性がある」と指摘した。10月21日、東京で撮影(2025年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

Yusuke Ogawa

[東京 21日 ロイター] - 双日総合研究所の吉崎達彦チーフエコノミストはロイターとのインタビューで、高市早苗新首相の政策は「分配よりも成長を重視しており、市場関係者の期待は高い」との見方を示した上で、「政務担当の首相秘書官に前経済産業次官の起用が報じられるなど、人事面では(経産省人脈を重視した)安倍晋三内閣を参考にしている可能性がある」と指摘した。

―高市新首相の印象は。

高市氏の特徴として重要な点は関西人であるということだ。戦後の首相で関西出身者は数少ない。やや語弊があるかもしれないが、高市氏には関西特有のヤンチャな雰囲気があり、これまでの常識にとらわれずに、どんどん新しいことにチャレンジしていく姿勢を感じる。(大阪府を地盤とする)日本維新の会との連立合意も、彼女が関西人ということがプラスに働いたと思う。他の人物が自民党総裁だった場合、維新と組むのはなかなか難しかったかもしれない。

日本で初めての女性首相の誕生だが、「ガラスの天井」を破る人は大体が型にはまらない性格だ。イギリスのサッチャー元首相も、イタリアのメローニ首相もそうだ。日本のメディアは高市氏を厳しい目で見がちだが、世論調査では若い世代からの支持がかなり高い。SNS上で大きな注目を集めており、いまの時代に合った人物を自民党は掘り当てたのかもしれない。総裁選でも党員票で圧勝するなど、しっかりとした正統性を持っており、皆が納得する総理総裁ではないか。

―政策面のポイントは。

高市氏の経済政策は、分配よりも成長重視であり、放任ではなく介入型だ。石破氏よりもビジネス優先なので、市場関係者の期待は高い。原発再稼働などの思い切った施策が求められている。(日本維新の会との連立政権の行方については)維新は都市型改革政党なので、「議員定数削減」のような政策をいきなり提案してくる。高市内閣に「放漫財政」の気配が出たら、それを止める役割を担うことになるだろう。

もっとも財務相に片山さつき氏の起用が報じられており、極端な積極財政策を取ることはないのではないか。ただ、故・安倍晋三氏が財務省に不信感を募らせていたこともあり、今回財務省OBを起用するあたり、高市氏は財務省の動きを強く警戒しているのだろう。政務担当の首相秘書官に飯田祐二・前経済産業次官を充てる方針も伝えられているが、人事面では(経産省人脈を重視した)安倍内閣を参考にしている可能性がある。

―日銀への影響はどうみるか。

金融政策決定会合を来週に控え、所信表明演説に注目している。金融緩和と積極財政を重視する「サナエノミクス」を強調するのではなく、ある程度は日銀に自由度を与えるような内容であった方が、マーケットの反応は良くなるだろう。日銀を後ろ手に縛るのではなく、「あなたたちを信頼している」というメッセージを出すことが大事だ。

また、来週はトランプ米大統領の訪日が予定されている。準備する時間はあまり残されていないが、トランプ氏とのファーストコンタクトがうまく行けば、内閣支持率は大きく上がるのではないか。内閣が発足してすぐに重要な局面を迎えることになる。

(聞き手・小川悠介)

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