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情報BOX:ガザ和平第1段階合意、詳細なお不明 統治など巡りリスクも

2025年10月09日(木)14時59分

 10月8日、イスラエルとイスラム組織ハマスはトランプ米大統領のパレスチナ自治区ガザ和平計画の第1段階となる停戦と人質解放で合意した。主なポイントを以下にまとめた。写真は5日、ガザ中部で撮影(2025年 ロイター/Mahmoud Issa)

David Brunnstrom Steve Holland

[ワシントン 8日 ロイター] - イスラエルとイスラム組織ハマスは8日、トランプ米大統領のパレスチナ自治区ガザ和平計画の第1段階となる停戦と人質解放で合意した。

主なポイントを以下にまとめた。

<合意について分かっていることは?>

トランプ大統領の20項目の枠組みの初期段階に関する合意は、エジプトで行われた間接協議でもたらされた。8日はイスラエルのガザ攻撃の引き金となったハマスによる奇襲から丸2年を迎えた翌日に当たる。

トランプ氏は、イスラエルとハマスの双方が計画の第1段階に署名し、これにより死者も含めて全ての人質が「非常に近いうちに」解放され、イスラエル軍がガザの「イエローライン」まで撤退すると発表した。イスラエル高官によれば、これはトランプ氏の計画におけるイスラエルの最初の撤退線だという。

ハマス側はイスラエル軍のガザ撤退と人質捕虜交換を含む戦争終結の合意に達したことを確認したが、イスラエルによる停戦の完全履行をトランプ氏と仲介国に求めた。

<主な不明点は?>

戦争終結への期待が高まっているにもかかわらず、和平のスケジュール、ガザ地区の戦後行政、ハマスの今後など重要な詳細はまだ明らかにされていない。

また戦争終結後、誰がガザを統治することになるのかも明確な見通しが立っていない。

トランプ氏の20項目計画では、パレスチナ自治政府の役割を想定しているが、それは大規模な改革を経た後に限られている。

<今後は?>

イスラエルのネタニヤフ首相は、合意を承認するために9日に政府を招集すると述べた。

ハマス関係者は、イスラエル政府が合意を承認してから72時間以内に人質が引き渡されると述べた。イスラエル政府報道官によると、人質解放は11日に開始される見通し。残る人質48人のうち20人は生存していると思われる。

ホワイトハウス高官によると、イスラエルがこのディール(取引)を承認しれば合意した地点まで24時間以内に撤退しなければならない。その後、人質解放が72時間以内に実現する運びだ。ホワイトハウスは13日にも人質の解放が始まると予想している。

ハマス側はこれに先立つ8日、ハマスとイスラエル双方が解放する人質や捕虜の名簿を交換したと明らかにした。

トランプ氏は数日中にエジプトへ向けて出発する見通し。ネタニヤフ首相はトランプ氏にイスラエル議会での演説を要請しており、同氏はアクシオスに対し、喜んで演説を行うと語った。

トランプ計画の次の段階では「平和理事会」と呼ばれる国際機関がガザの戦後行政で役割を果たすことになっている。トランプ氏が主導し、英国のトニー・ブレア元首相も参加することになっている。

<最大のリスクは?>

ガザとウクライナの戦争を速やかに終結させると約束して1月に大統領に就任したトランプ氏にとって、この合意が成功すれば、これまでで最大の外交政策上の成果となる。

ハマス側はこれまで、イスラエルが要求する武装解除についての話し合いを拒否。パレスチナ筋によれば、イスラエル軍がパレスチナの土地を占領している限り、ハマス側はこれを拒否するという。

協議に詳しい2人の関係筋によると、イスラエル軍撤退の進め方が障害となっており、ハマス側は捕虜の解放に関する明確なスケジュールやイスラエル軍による完全撤退の保証を求めている。

イスラエルはトランプ氏の要請を受けてガザ地区での軍事作戦を縮小しているが、攻撃を完全に停止したわけではない。

この計画を支持するアラブ諸国は、パレスチナ国家の最終的な樹立につながる必要があるとしている。一方でネタニヤフ氏は、それは決して実現しないと述べている。

ハマス側はこれまで、パレスチナ自治政府が監督し、アラブ諸国やイスラム諸国が支援するパレスチナ・テクノクラート(実務型)政府にのみガザの統治を委ねると表明。ブレア氏の役割や外国によるガザ統治を拒否している。

ハマスが解放を望むパレスチナ人のリストには、イスラエルによって投獄された著名な囚人が含まれているとみられ、こうした囚人らの解放はこれまでの停戦協定で踏み込めなかった領域と言える。

ロイター
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