ニュース速報
ワールド

トランプ税制法案、実施されれば若年層から高齢者へ富を移転=アナリスト

2025年06月26日(木)11時40分

 トランプ米大統領(共和党)が大規模減税になるとうたう税制・歳出法案に関し、超党派のアナリストらは法案が実施されれば若年層から高齢者へ富を移転させる結果になると問題視している。写真は2022年7月撮影(2025年 ロイター/Dado Ruvic/Illustration)

[ワシントン 25日 ロイター] - トランプ米大統領(共和党)が大規模減税になるとうたう税制・歳出法案に関し、超党派のアナリストらは法案が実施されれば若年層から高齢者へ富を移転させる結果になると問題視している。法案には保護者や新生児、私立学校の生徒といった若年層への減税措置が含まれている。しかし、36兆2000億ドル規模に上る債務残高が数兆ドル上乗せされることが恩恵を打ち消し、長期的に経済成長を押し下げ、若年層にとっての増税や住宅ローン返済が負担になりかねない。

ペンシルベニア大ウォートン予算モデル担当のディレクター、ケント・スメッターズ氏は「次世代はいわば取り残されることになる」と指摘する。

超党派の調査機関によると、中央値近傍の収入がある40歳の労働者は法案が成立した場合、生涯収入が7500ドル減る一方、同じ収入の70歳は1万7500ドル増える。

保守派のシンクタンク、マンハッタン研究所のジェシカ・リエドル氏は「短期的には高所得者に恩恵が傾くのは確かだ」と話す。

さらにアナリストらが最も問題視するのは、法案が実施されれば債務残高が3兆ドル膨らむことだ。今後数年間は金利が上昇し、政府は債務返済に予算を割くことを優先せざるを得なくなる可能性が高い。イェール大予算研究所のジョン・リッコ氏は「世代間移転が起こるのは明らかだ」と言及した。

また、法案は新生児に1000ドルの貯蓄口座を設け、子どもを抱えた世帯への減税を拡大するとしているものの、その中身は上下両院の法案で異なっている。

スティーブ・スカリーズ下院議員(共和党)は5月に法案が下院で可決された後、法案によって子ども2人を抱えた所得が中央値の世帯の手取り収入が4000―5000ドル増えると強調した。

ところが、この計算には法案によって低所得者層や中間所得者層の医療費や学生ローン、食品などの負担が増えることは考慮されていない。

議会予算局(CBO)やアナリストらによると、こうした世帯への負担増は、減税によって得られる可能性がある節約分を上回るという。

一方で、左派の予算・政策優先主義センターのブレンダン・デューク氏は、トランプ氏が昨年の大統領選で約束した65歳を超える高齢者への減税が法案に盛り込まれたものの、多くを占める低所得者には適用されないと指摘。「減税は基本的に、高齢者の半分を占める低所得者には何の役にも立たない」と切り捨てた。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

H&M、3─5月売上高が予想以上に減少 「消費者は

ワールド

中国南部で大洪水、貴州省では6人死亡 災害拡大リス

ビジネス

日経平均は5カ月ぶり高値、半導体買われ3万9000

ビジネス

焦点:昨夏の市場暴落再来に警戒感、大口投資家が備え
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係・仕事で後悔しないために
  • 3
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 4
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 5
    人口世界一のインドに迫る少子高齢化の波、学校閉鎖…
  • 6
    【クイズ】北大で国内初確認か...世界で最も危険な植…
  • 7
    「子どもが花嫁にされそうに...」ディズニーランド・…
  • 8
    都議選千代田区選挙区を制した「ユーチューバー」佐…
  • 9
    韓国が「養子輸出大国だった」という不都合すぎる事…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 7
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 8
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 9
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 10
    「アメリカにディズニー旅行」は夢のまた夢?...ディ…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中