トランプ税制法案、実施されれば若年層から高齢者へ富を移転=アナリスト

トランプ米大統領(共和党)が大規模減税になるとうたう税制・歳出法案に関し、超党派のアナリストらは法案が実施されれば若年層から高齢者へ富を移転させる結果になると問題視している。写真は2022年7月撮影(2025年 ロイター/Dado Ruvic/Illustration)
[ワシントン 25日 ロイター] - トランプ米大統領(共和党)が大規模減税になるとうたう税制・歳出法案に関し、超党派のアナリストらは法案が実施されれば若年層から高齢者へ富を移転させる結果になると問題視している。法案には保護者や新生児、私立学校の生徒といった若年層への減税措置が含まれている。しかし、36兆2000億ドル規模に上る債務残高が数兆ドル上乗せされることが恩恵を打ち消し、長期的に経済成長を押し下げ、若年層にとっての増税や住宅ローン返済が負担になりかねない。
ペンシルベニア大ウォートン予算モデル担当のディレクター、ケント・スメッターズ氏は「次世代はいわば取り残されることになる」と指摘する。
超党派の調査機関によると、中央値近傍の収入がある40歳の労働者は法案が成立した場合、生涯収入が7500ドル減る一方、同じ収入の70歳は1万7500ドル増える。
保守派のシンクタンク、マンハッタン研究所のジェシカ・リエドル氏は「短期的には高所得者に恩恵が傾くのは確かだ」と話す。
さらにアナリストらが最も問題視するのは、法案が実施されれば債務残高が3兆ドル膨らむことだ。今後数年間は金利が上昇し、政府は債務返済に予算を割くことを優先せざるを得なくなる可能性が高い。イェール大予算研究所のジョン・リッコ氏は「世代間移転が起こるのは明らかだ」と言及した。
また、法案は新生児に1000ドルの貯蓄口座を設け、子どもを抱えた世帯への減税を拡大するとしているものの、その中身は上下両院の法案で異なっている。
スティーブ・スカリーズ下院議員(共和党)は5月に法案が下院で可決された後、法案によって子ども2人を抱えた所得が中央値の世帯の手取り収入が4000―5000ドル増えると強調した。
ところが、この計算には法案によって低所得者層や中間所得者層の医療費や学生ローン、食品などの負担が増えることは考慮されていない。
議会予算局(CBO)やアナリストらによると、こうした世帯への負担増は、減税によって得られる可能性がある節約分を上回るという。
一方で、左派の予算・政策優先主義センターのブレンダン・デューク氏は、トランプ氏が昨年の大統領選で約束した65歳を超える高齢者への減税が法案に盛り込まれたものの、多くを占める低所得者には適用されないと指摘。「減税は基本的に、高齢者の半分を占める低所得者には何の役にも立たない」と切り捨てた。