トランプ氏、マスク氏に「失望」 政府契約打ち切り示唆 テスラ株急落

トランプ米大統領は5日、実業家のイーロン・マスク氏がトランプ氏肝入りの包括的な税制・歳出法案に公然と反対していることに「失望した」と非難した。3月撮影(2025年 ロイター/Vincent Alban)
Nandita Bose Andrea Shalal
[ワシントン 5日 ロイター] - トランプ米大統領は5日、実業家のイーロン・マスク氏がトランプ氏肝入りの包括的な税制・歳出法案に公然と反対していることに「失望した」と非難した。
マスク氏は3日、議会上院で審議されている同法案を「不快で忌まわしい存在」と呼び、改めて厳しく批判した。
トランプ氏は大統領執務室で「イーロンと私は素晴らしい関係だった。これからもそうなのかはわからない」と言及。「私はイーロンにとても失望している。私はイーロンを大いに助けてきた」と述べた。トランプ氏がマスク氏の批判に直接反応するのはこれが初めて。
トランプ氏はその後、自身のソーシャルメディアでマスク氏の企業への政府契約や補助金を打ち切る可能性があると示唆。「数十億ドルに上る予算を節約する最も簡単な方法は、マスク氏への政府補助金と契約を打ち切ることだ」と述べた。
トランプ氏は法案が電気自動車(EV)購入に対する税制優遇を取り上げるため、マスク氏が怒っていると主張した。
マスク氏の企業には、EV大手テスラのほか、宇宙開発ベンチャー企業スペースX、スペースXの衛星通信サービス「スターリンク」も含まれる。
マスク氏が最高経営責任者(CEO)を務めるテスラの株価は終値で14.3%下落し、時価総額は約1500億ドル減少した。
こうした中でも、マスク氏はXへの投稿でトランプ氏への批判を展開。「私がいなければ、トランプは大統領選に敗退していただろう」と主張し、トランプ氏は「恩知らず」だと批判した。マスク氏は2024年の大統領選でトランプ氏をはじめとする共和党候補者の支援に約3億ドルを献金した。
引け直後にマスク氏は、トランプ氏は弾劾されるべきだとするXの投稿に「そうだ」と返信した。
<テスラへの影響>
トランプ氏との確執は、テスラに複数のハードルをもたらす可能性がある。運輸省は自動車の設計基準を規制しており、テスラがペダルやハンドルのないロボタクシーを量産できるかどうかに大きな影響力を持つとみられる。
また、同省は死亡事故を受け、テスラの運転支援ソフト「フル・セルフドライビング」を調査している。
テスラの投資家であるガーバー・カワサキ・ウェルス・アンド・インベストメント・マネジメントのロス・ガーバーCEOは、トランプ氏との確執が「テスラに対する負の力」を生み出すと指摘。政府による調査がさらに増える恐れがあるとし「(マスク氏が)手にしたとみられていたメリットが全てデメリットに転じている」と述べた。
モーニングスターのアナリスト、セス・ゴールドスタイン氏は規制当局がテスラを標的としたルールを作成する可能性もあると指摘。
大半の自動運転車メーカーは、物体を検知するためレーダーやLiDAR(ライダー)といったセンサーを使用しているが、テスラはカメラのみに依存しており、同氏によると、連邦規制当局がライダーの搭載を義務付ける可能性がある。
ゴールドスタイン氏は「トランプ大統領の気に障ることをすれば、常に個人的な報復を受けるリスクがある」と指摘。ただ、自動運転車の規制を巡っては長年多くの企業が要望を出しており、テスラのみを標的にしたルールが作成される可能性は低いのではないかとしている。
テスラ株の予想株価収益率(予想PER)は150倍と、エヌビディアなど他の大手ハイテク株のPERを大幅に上回っている。
クロスマーク・グローバル・インベストメンツのボブ・ドール最高投資責任者(CIO)は「私はテスラをショートしている。バリュエーションが理解できない。ファンダメンタルズも理解できない。過大評価されていると思う」と述べた。