ニュース速報
ワールド

アングル:トランプ氏のカナダ併合発言は「陽動作戦」、関税見送りも=専門家

2025年01月18日(土)07時23分

トランプ次期米大統領が隣国で友好国のカナダに関税や併合などの脅しをかけているものの、両国関係が20日の就任式に「終末」を迎えるという悲観論ばかりではなさそうだ。2020年9月撮影(2025年 ロイター/Tom Brenner)

Atsuko Kitayama

[トロント 17日 ロイター] - トランプ次期米大統領が隣国で友好国のカナダに関税や併合などの脅しをかけているものの、両国関係が20日の就任式に「終末」を迎えるという悲観論ばかりではなさそうだ。

米バンダービルト大のトーマス・シュワルツ歴史学教授は16日にトロントで開かれた講演会で、多くの懸念に反し、トランプ氏が関税を巡り実際に行動しない可能性は十分にあると語った。

1971年にニクソン元大統領が実施した関税がカナダに衝撃を与えたように、トランプ氏が大幅な関税を課す可能性はあるものの、カナダからの輸入品に25%の関税を課し、「嫌ならば米国の51番目の州になればいい」というトランプ氏の発言は「陽動作戦」にすぎないという認識を示した。

トランプ氏の優先事項は国内政策で、インフレ抑制を公約に掲げていたこともあり、「インフレ高進につながりかねない関税は即時の反発を招き、撤回を迫られるだろう」とした。

また、ルビオ国務長官候補やウォルツ次期大統領補佐官(国家安全保障担当)ら側近が、カナダのトルドー首相の辞任表明を踏まえ、「新たな指導者が就任し、交渉できる相手ができるまで見送ろう」と説得する可能性があるとも述べた。

一方、トロント大学ムンク国際問題・公共政策研究所のドゥリュー・ファーガン教授はロイターに対し、25%の関税は両国の「共生」関係を悪化させるとし、次期米政権の突飛な考えの「賞味期限が長くないことを願う」として慎重な見方を示す。

さらに、足元のカナダの政治的リーダシップの欠如から、米国がカナダの鉄鋼・アルミニウム製品に対し関税を課した2018年よりも厳しい状況に直面する可能性があると述べた。

<併合>

調査会社アンガス・リードの最新の調査によると、「カナダを51番目の州」にすることを「支持する」との回答は、カナダで10%、米国では25%。また、トランプ氏の発言を「真剣」と考えるとの回答はカナダで32%、米国で22%だった。

前出のファーガン教授は、100年以上も「併合」が話題になったことはないとし、併合よりもまず両国が連携してできることを考えるべきと話す。「相互利益のために本腰を入れる必要がある」とし、それは「カナダを心理的、経済的に打ちのめすことではない」と強調。ここ数週間のレトリックが反発を高め、協力が困難となる可能性に懸念を示した。

トランプ氏はこれまで、カナダに対し「経済的圧力」をちらつかせるにとどめている。しかし仮に米国がカナダに対し軍事力を行使した場合、両国の軍事力を比較すると、どのような結果に至るかを想定することは困難ではない。

世界の軍事力を分析するグローバル・ファイヤーパワーの25年版データによると、米国が抱える正規軍132万8000人に対し、カナダは6万8000人。米軍保有の戦闘機は1790機、カナダ軍は66機にとどまる。

(北山敦子 編集:佐々木美和)

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イラン戦争は2週目に、トランプ氏「無条件降伏」求め

ビジネス

アングル:欧州で若者向け住宅購入の新ビジネス、価格

ワールド

焦点:道半ばの中国「社会保険改革」、企業にも個人に

ワールド

昨年の関税合意実施を米と確認、日本が不利にならない
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だったはずの中国が、不気味なまでに静かな理由
  • 2
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示さない
  • 3
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗雲...専門家「イランの反撃はこれから」「報道と実態にズレ」
  • 4
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 5
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 6
    10歳少女がライオンに激しく襲われる...中国の動物園…
  • 7
    「みんな一斉に手を挙げて...」中国の航空会社のフラ…
  • 8
    【WBC】侍ジャパン、大谷翔平人気が引き起こした球場…
  • 9
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 10
    「巨大な水柱に飲み込まれる...」米海軍がインド洋で…
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 5
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 8
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 9
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 10
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中