ニュース速報
ワールド

韓国大統領の退陣圧力強まる、野党は4日にも弾劾法案 戒厳令騒動受け

2024年12月04日(水)10時56分

韓国の尹錫悦大統領は4日、3日夜に発令した戒厳令を解除する方針を発表した。同日撮影(2024年 ロイター/Kim Hong-Ji)

Jack Kim Ju-min Park

[ソウル 4日 ロイター] - 韓国の尹錫悦大統領が3日夜に発令した戒厳令を4日早朝に解除すると表明したことを受け、国会議員らは大統領の弾劾を呼びかけている。野党議員らは、弾劾法案を4日中に提出し、72時間以内に採決する考えを示した。

野党の黄雲夏議員は記者団に「国会は大統領の職務を即時停止し、弾劾法案を早急に可決することに集中すべきだ」と強調した。

尹氏は3日夜の緊急テレビ演説で、野党が国を危機に陥れていると非難した上で、「反国家勢力」を撲滅するとして戒厳令を宣言。これに反発した国会は議員300人のうち190人が出席して解除要求決議を採決し、全員の賛成で可決していた。

聯合ニュースによると、政府は4日早朝の閣議で戒厳令解除を決定した。戒厳令は1980年以来で初めて。

国会前では抗議していた人々が「われわれは勝利した」などと声を上げた。最大野党の「共に民主党」は大統領に辞任を要求し、拒否すれば弾劾に直面すると警告した。

同党の朴賛大院内代表は「戒厳令が解除されても、国家反逆罪は免れない。尹大統領がもはや国を正常に運営できないことは全国民に明らかになった。辞任すべきだ」と主張した。

聯合ニュースとニューシスは、尹錫悦大統領の秘書室長や首席秘書官らが一斉に辞意を表明したと報じた。

ネイバーやLGエレクトロニクスなど一部の企業はこの日、従業員に在宅勤務を推奨した。

企画財政省は4日、戒厳令宣布を巡る混乱を受け、必要であれば「無制限」の流動性を金融市場に注入する用意があると表明した。崔相穆企画財政相と李昌ヨン・韓国銀行(中央銀行)総裁が緊急に会合した。また、同日午前9時(日本時間同)から中銀臨時会合が開かれた。

4日のソウル株式市場の総合株価指数(KOSPI)は、約2%下落して取引を開始。一方、通貨ウォンは一時2年ぶり安値を付け、その後は1ドル=1418ウォン前後で推移している。

尹氏は支持率が20%前後と低迷しているほか、同氏が率いる与党「国民の力」は4月の総選挙で大敗し、野党が国会の多数を握っている。

ブリンケン米国務長官は、尹氏の戒厳令撤回を歓迎し、「政治的な意見の相違が平和的に法の支配に従って解決されることを引き続き期待している」と述べた。

米ホワイトハウスの報道官は「尹大統領が戒厳令を撤回し、国会の戒厳令解除の決議を尊重したことに安堵している」と述べた。

米シンクタンク、アジア・ソサエティ政策研究所の副所長で、オバマ政権で東アジア担当の高官を務めたダニー・ラッセル氏は「韓国は国家として危機を回避したが、尹大統領は自ら足を撃ってしまったかもしれない」と述べた。

また、総選挙が前倒しになる可能性もあると指摘。「韓国の政治的不安定と国内対立はわれわれにとって好ましいことではないが、北朝鮮にとっては好都合だ。北朝鮮が舌なめずりしていることは間違いない」と語った。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

エヌビディア、新興AI半導体開発グロックを200億

ワールド

北朝鮮の金総書記、24日に長距離ミサイルの試射を監

ワールド

米、ベネズエラ石油「封鎖」に当面注力 地上攻撃の可

ワールド

英仏日など、イスラエル非難の共同声明 新規入植地計
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 7
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中