ニュース速報

ワールド

焦点:中南米に左派政権次々、コロナとインフレ契機

2022年06月25日(土)11時25分

6月22日、 中南米はコロンビアで初の左派大統領が誕生し、ブラジルも10月の大統領選に向け左派候補が有利に選挙戦を進めるなど、「ピンクの潮流」と呼ばれた2000年代初頭の左傾化を思わせる動きが強まっている。写真は20日、コロンビアのボゴタで、国旗に包まれたラテンアメリカ独立運動指導者シモン・ボリバルの像(2022年 ロイター/Luisa Gonzalez)

[メキシコ市/ボゴタ/サンパウロ 22日 ロイター] - 中南米はコロンビアで初の左派大統領が誕生し、ブラジルも10月の大統領選に向け左派候補が有利に選挙戦を進めるなど、「ピンクの潮流」と呼ばれた2000年代初頭の左傾化を思わせる動きが強まっている。

中南米では、新型コロナウイルスのパンデミックによる経済的打撃と、ロシアのウクライナ侵攻が引き起こした猛烈なインフレに怒った有権者が主流派政党に見切りをつけ、「大きな政府」と財政出動の公約に引き寄せられている。

「左派政権は希望そのものだ」と話すのはコロンビアの首都ボゴタの小学校教師で、19日の大統領選決選投票を制した左派のペトロ氏を支持するグロリア・サンチェスさん(50)。「国民を、貧しい人々を人間と見なす政府は初めてだ」と賞賛を惜しまない。

中南米では、既にメキシコ、アルゼンチン、チリ、ペルーなどで左派が政権を握っており、これにコロンビアが加わった。さらにブラジルでは左派でルラ元大統領が世論調査で極右の現職、ボルソナロ氏をリードしている。

チリやコロンビアなどで保守派の牙城が覆され、政治的断層が動いたことで、穀物や金属から経済政策、さらには米国や中国といった主要パートナーとの関係まで幅広い分野に影響が及びかねない。

ブラジルの左派・労働党のウンベルト・コスタ上院議員は「政府ごとに微妙な違いはあるが、中南米では実に重要ではっきりした動きが起きている」と言う。

チリでは今年3月に急進派のボリッチ氏(36)が大統領に就任。ペルーでは昨年、社会主義者で元教師のカスティジョ氏が大統領に就いた。ボリビアは保守派が短期間、暫定的に政権の座にあったが、2020年の総選挙で社会党が勝利した。

元祖「ピンクの潮流」の象徴的存在だったボリビアのモラレス元大統領は、コロンビアでのペトロ氏勝利について「中南米左派の旗を掲げる社会的良心と連帯の高まり」を表すものだとツイートした。

<注目の的・ブラジル>

注目の的となっているのがブラジルだ。10月に大統領選が実施されるが、ポピュリストで極右の現職・ボルソナロ氏への不満が高まっており、左派政権が誕生する可能性がある。

左派のアレクサンドレ・パディーリャ議員は「ボルソナロ氏との戦いで左派は息を吹き返した」と述べた。反ボルソナロ氏の動きが若い有権者を引き付け、政治的・経済的現状に抗議する人々を結び付けているという。

同議員は「世界中で経済や政治に携わる人々が、不平等を深める結果となった一連の新自由主義的な政策を見直す必要がある、と気づきつつあるのだと思う」と指摘した。

だが、今回のピンクの潮流は、ベネズエラのチャベス氏やボリビアのモラレス氏など過激な左派が台頭した前回と大きく異なっている。

ペルーのカスティジョ氏は昨年半ばの大統領就任以来、中道に振れ、自身の与党との関係がぎくしゃくしている。チリのボリッチ氏は穏健な経済政策を模索し、左派の権威主義的な体制を批判している。

流れが変わる可能性もある。アルゼンチンでは中道左派のフェルナンデス大統領が2023年の選挙に向けて圧力にさらされている。ペルーのカスティジョ大統領はたび重なる弾劾提案と戦っており、チリのボリッチ氏の支持率は就任以来、低下している。

エコノミスト・インテリジェンス・ユニットのアナリスト、ニコラス・サルディアス氏は「もし、今選挙が行われたら、こうした『ピンク』政権の多くは消滅するだろう」と話した。「支持基盤は盤石ではない」という。

コロンビアの一般有権者の多くは単に、自分とその子どもたちのために、より良い生活を求めていた。望んでいるのは勉強や仕事の機会だ。

ボゴタで商店を経営するペドロ・ペドラザさん(60)は「左派とか右派とかはよく分からない。私たちは労働者で、そういうことはどうでもいい。働きたい、そして子どもたちには自分たちよりもいい生活をしてほしい」と言う。「タダで何かが欲しいわけではない。働いて成功し、貧困から抜け出せるような環境が欲しい」と述べた。

(Isabel Woodford記者、Carlos Vargas記者、Gabriel Araujo記者)

ロイター
Copyright (C) 2022 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

印ロ、LNG取引再開を協議 イラン戦争でエネルギー

ビジネス

連合の春闘賃上げ率、2次集計は5.12% 芳野会長

ワールド

米上院、国土安全保障省への資金法案可決 ICEは除

ビジネス

英小売売上高、2月は前月比-0.4% イラン情勢で
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終回に世界中から批判殺到【ネタバレ注意】
  • 3
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊張緩和の兆しか
  • 4
    「俺たちはただの人間だ」――BTSが新アルバム『ARIRAN…
  • 5
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 6
    親の遺産はもう当てにできない? ベビーブーム世代…
  • 7
    意外と「プリンス枠」が空いていて...山崎育三郎が「…
  • 8
    デンマーク王妃「帰郷」に沸騰...豪州訪問で浮かび上…
  • 9
    「予想よりも酷い...」ドラマ版『ハリー・ポッター』…
  • 10
    実は「ミュージカルはポリティカル」?...社会の闇を…
  • 1
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 2
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 3
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラリアの「NVES規制」をトヨタが切り抜けられた理由
  • 4
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 5
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 6
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 7
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 8
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 9
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 10
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中