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トルコ大統領の大使追放指示、経済苦境から目をそらす目的か

2021年10月25日(月)10時24分

トルコのエルドアン大統領が西側10カ国の大使追放を外務省に指示したことを受け、同国野党や専門家は経済の苦境から目をそらさせるのが目的だと批判した。写真は、同大統領。2021年9月29日にロシア・ソチで撮影。(2021年 ロイター/Pool via REUTERS -PROVIDED BY A THIRD PARTY)

[イスタンブール 24日 ロイター] - トルコのエルドアン大統領が西側10カ国の大使追放を外務省に指示したことを受け、同国野党や専門家は経済の苦境から目をそらさせるのが目的だと批判した。一方、外交関係者は大使追放が回避される可能性になお望みをかけている。

エルドアン氏は23日、トルコで拘束中の慈善家オスマン・カバラ氏の釈放を求めた10カ国の大使追放を外務省に指示したと述べた。

同国の通貨リラは、中央銀行が先週に200ベーシスポイント(bp)の利下げを行ったことを受け、過去最安値を付けており、市場で懸念が強まっている。アジア時間25日の朝方にリラは対ドルで1.6%下落し、過去最安値を更新した。

野党・共和人民党(CHP)のケマル・キリクダログル党首は、エルドアン氏は「急速にトルコを危機の瀬戸際に追い詰めている」と語気を強めた。大使追放は「国益を守るためではなく、経済の崩壊に見せ掛けの理由を付けるのが目的だ」とツイッターに投稿した。

一方、イスタンブールに本拠を置くシンクタンク「エダム」の会長で元外交官のシナン・ウルゲン氏はツイッターに「トルコ政府が(大使追放を)実行に移さないことを望む」と投稿。北大西洋条約機構(NATO)加盟国としては前例のない動きだと述べた。

ある外交筋は、25日の閣議で判断が下される可能性があり、緊張緩和は依然、可能だと述べた。

国際通貨基金(IMF)はトルコの今年の経済成長率が9%になると予想するが、インフレ率はその2倍超に跳ね上がっている。リラはエルドアン氏が2018年の総選挙で勝利して以降、対ドルで50%下落している。

調査会社ユーラシア・グループのエムレ・ペケル氏は経済的苦境に陥っているタイミングで大使追放の脅しをかけるのは、「低迷するエルドアン氏の支持率の押し上げを狙った、浅はか、もっと悪く言えば愚かな戦略だ」と断じた。

ロイター
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