ニュース速報

ワールド

IEA、化石燃料事業の投資禁止を 温暖化で「抜本的対策必要」

2021年05月19日(水)02時47分

国際エネルギー機関(IEA)は18日、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするには、エネルギーの生産・利用・輸送方法を根本的に変える必要があるとの報告書をまとめた。写真は、中国・ハルビンの石炭火力発電所。2019年11月15日に撮影。(2021年 ロイター/Muyu Xu)

[ロンドン 18日 ロイター] - 国際エネルギー機関(IEA)は18日、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするには、エネルギーの生産・利用・輸送方法を抜本的に変える必要があり、化石燃料事業への新規投資を禁止すべきとの報告書をまとめた。

2015年に採択された国際的な温暖化対策の枠組み「パリ協定」は、気温上昇を摂氏1.5度に抑えるためには、温室効果ガスの排出量を2050年までに実質ゼロとする必要があるとしている。

多くの国が実質ゼロの目標を掲げているが、たとえ目標を完全に達成したとしても、2050年には世界全体で依然として220億トンの二酸化炭素が存在し、2100年までの気温上昇が摂氏2.1度前後になる見通しという。

今回の報告書は、今年11月にスコットランドで開催予定の国連の気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)の参考資料となる。

報告書では、実質ゼロを達成するための400以上の目標を提言。今後、新たな化石燃料供給プロジェクトへの投資を一切禁止することや、二酸化炭素回収(カーボンキャプチャー)技術を導入しない新たな石炭火力発電所への投資の最終決定を見送ることがなどが挙げられている。

IEAのビロル事務局長はロイターに「実質ゼロへの道は狭いが、まだ達成可能だ。2050年までに実質ゼロを達成したいのであれば、これ以上の新たな石油・ガス・石炭プロジェクトへの投資は不要になる」と述べた。

専門家は、エネルギーの利用方法を過去に例のない形で変えなければ、異常気象や種の絶滅が増える恐れがあると以前から警告している。

IEAは、実質ゼロを達成するには、内燃エンジン搭載乗用車の新規販売を2035年までにゼロにし、世界の電力業界が2040年までに排出量実質ゼロを達成する必要があるとしている。

再生可能エネルギーの大規模な導入も必要で、2050年までに電力の90%近くを再生可能エネルギーで、残りの大半を原子力発電で生産する必要があるという。

太陽光発電は2030年まで年630ギガワットの増設、風力発電は390ギガワットの増設が必要。合計の増設量は、昨年記録した過去最高水準の4倍に達する。

二酸化炭素回収・貯留(CCS)やグリーン水素など、まだ本格的な商業化に至っていない新技術の投入も必要になる。

IEAと国際通貨基金(IMF)の共同分析によると、実質ゼロを達成するには、年間のエネルギー投資を現在の2兆ドルから2030年までに年5兆ドルに引き上げる必要がある。これは世界の域内総生産(GDP)伸び率を0.4%ポイント押し上げる要因になるという。

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

原油先物1%超上昇、米がベネズエラ出入港の制裁対象

ワールド

米、イラン産石油「影の船団」に制裁発動

ビジネス

最新のインフレ指標は良好、持続的改善が必要=米シカ

ワールド

ウクライナ巡る協議「何かに近づいている」とトランプ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 2
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 6
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 7
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 8
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 9
    円安と円高、日本経済に有利なのはどっち?
  • 10
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中