ニュース速報

ワールド

焦点:今も世界に「イスラム国」、はびこる組織と危険思想

2019年11月01日(金)14時57分

 10月27日、イラクとシリアで勢力を誇った過激派組織「イスラム国」(IS)にとって、最高指導者アブバクル・バグダディ容疑者の死は大きな打撃だが、その組織や思想が危険であることに変わりはないと、専門家は指摘する。写真はシリアの反対派グループ、ISと戦うシリア民主軍。2017年8月14日、シリアのラッパで撮影(2019年 ロイター/Zohra Bensemra)

[27日 ロイター] - イラクとシリアで勢力を誇った過激派組織「イスラム国」(IS)にとって、最高指導者アブバクル・バグダディ容疑者の死は大きな打撃だが、その組織や思想が危険であることに変わりはないと、専門家は指摘する。

ISを信奉する者たちの攻撃手法は、軍隊と対峙するスタイルから、奇襲や自爆攻撃に変化した。4月にスリランカで250人が犠牲となった同時爆破攻撃も、ISが犯行声明を出した。

すべての犯行にISの関与があったと確認できているわけではないが、軍事作戦よりもイデオロギー的なつながりにおいて、ISはなお多くの国の安全にとって脅威とみなされている。

世界各国におけるISの最近の活動状況をまとめた。

<イラク>

米国の支援を受けたイラクの軍隊に敗北してから、ISの戦い方はかつてのゲリラ方式に回帰した。敗北から2年以上経過したが、イラク治安部隊はISの残存勢力に対する掃討作戦を定期的に実施している。ディヤーラ、サラハッディン、アンバル、キルクーク、ニネベなどの県では、ISの潜伏工作員による誘拐や爆弾攻撃などが頻繁に起きている。

潜伏工作員の活動は地方に集中し、農作物を燃やしたり農民から金品を奪うなどのケースが多いが、2月には北部の都市モスルで自動車爆弾が爆発して2人が死亡、24人が負傷した。

米国防総省は1月、IS勢力の回復ペースはシリアよりイラクの方が速いと報告。アナリストによる先の推計によると、イラクでは現在、約2000人のIS戦闘員が活動する。

<シリア>

ISは軍事的な勢力が縮小し、自爆攻撃や奇襲などゲリラ戦に転じた。この1年間は米軍などを標的にシリア北部の都市などで爆弾攻撃を仕掛けている。

米軍の支援を受けてISと交戦したクルド人部隊によると、シリア東部で潜伏工作員が急速に増殖。数千人規模のIS戦闘員の捕虜を抱え、危機にさらされている。捕虜の問題はトランプ米大統領が今月、シリア北部からの米軍の撤収を発表し、トルコ軍がシリア北部に侵攻したことで注目を集めた。

トルコ軍は戦闘地域の施設から逃げ出したIS戦闘員の捕虜約200人を拘束し、軍監視の下で他の施設に移送した。

<エジプト>

この1年間、ISによる大規模な攻撃は起きていない。しかし、小規模な襲撃は依然として続いており、エジプト軍は主にシナイ半島でイスラム系反政府勢力に対する軍事活動を強化している。

エジプト軍によると、ISとつながりがある戦闘員への掃討作戦に乗り出した昨年2月以降、数百人を殺害した。

<サウジアラビア>

ISは、サウジの治安部隊や少数派のイスラム教シーア派を狙った爆弾攻撃や銃撃を行っている。米国主導の有志連合によるISへの空爆にサウジが加わった際にはバグダディ容疑者がサウジへの攻撃を呼び掛け、サウジの支配層に侮蔑的な言い回しを使った。

<イエメン>

サウジを後ろ盾とするハディ政権と、イランの支援を受けたフーシ派による戦闘で内戦状態に陥ると、ISは2014年末、イエメンに下部組織を作ることを発表した。しかし、ISは国際武装組織アルカイダ傘下の「アラビア半島のアルカイダ(AQAP)」などからの厳しい抵抗に遭い、ISとAQAPが戦闘を行った。また、アルカイダとISは武装組織フーシ派とも戦っている。

ISはイエメン南部で複数の殺害や爆弾攻撃について犯行声明を出しているが、この国で領土を獲得したことはない。専門家によると、イエメンではより歴史が古く、現地に深く根差したアルカイダの方が大きな脅威だという。

<ナイジェリア>

イスラム過激派ボコ・ハラムは2009年以来、ナイジェリア北東部で攻撃を続けている。これまでに3万人余りが殺害され、200万人が家を追われた。ボコ・ハラムは2016年に分裂し、このうち「イスラム国西アフリカ州(ISWAP)」がISに忠誠を誓った。

ISWAPは昨年来、軍事基地を重点的に攻撃し、ナイジェリアにおける有力な武装勢力となった。ISがISWAPをどの程度支援しているかは不明。専門家の多くは、両者の関係は主に表向きのもので、資金や物資の面で直接的なつながりはないとみている。

<アフガニスタン>

東部のナンガルハル州で2015年1月、ISの分派を名乗る過激派組織「イスラム国ホラサン(ISIS─K)」が発足し、今も同州で勢力を保っている。ISIS─Kは指導者がバグダディ容疑者に忠誠を誓っているが、IS本体との直接的なつながりははっきりしない。

ISIS─Kはカブールなどの都市で市民が狙われた攻撃で犯行声明を出しており、多くの地方都市を支配するイスラム教原理主義組織タリバンと戦闘を行った。米軍関係者によるとISIS─Kのメンバーは2000人弱。

<スリランカ>

ISは4月、キリスト教の復活祭に教会やホテルで爆弾が爆発した事件で犯行声明を出し、メンバー8人がバグダディ容疑者に忠誠を誓う映像を公開した。ISによると、この映像に映っていたメンバーが自爆攻撃を実行した。

スリランカ当局によると、国内のイスラム教グループ2つがISとつながりを持つ疑いがある。

<インドネシア>

世界最大のイスラム国家だが、国民の多くは戒律に厳格ではない。しかし、ISの影響力は再び拡大していう。当局によると、数千人の国民がISによる感化を受け、約500人がISに加わるためシリアに渡った。

昨年5月にスラバヤであった自爆攻撃では30人以上が死亡したが、この攻撃にはIS寄りの過激派組織「ジャマー・アンシャルット・ダウラ(JAD)」の工作員が関与していた。

<フィリピン>

フィリピンでは、イラクやシリアを逃れた過激派が、ミンダナオ島の密林や人里離れた場所にあるイスラム教徒の多い村に潜伏することが危惧されている。こうした地域は以前から法律が行き届かず、氏族同士が対立し、独立派やイスラム教徒による抵抗があった。

ミンダナオ島で起きる爆弾攻撃や反政府勢力による攻撃について、ISはしばしば犯行声明を出すが、信ぴょう性が疑われている。

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

ニュース速報

ビジネス

大手金融機関、接戦の大統領選に備え 市場混乱を警戒

ワールド

民主党の2.2兆ドルのコロナ経済対策法案は受け入れ

ワールド

FDA、アストラゼネカのコロナワクチン安全性調査を

ワールド

米財務長官、追加コロナ対策で「前進」 下院は法案採

MAGAZINE

特集:感染症 vs 国家

2020-10・ 6号(9/29発売)

新型コロナウイルスに最も正しく対応した国は? 各国の感染拡大防止策を徹底査定する

人気ランキング

  • 1

    新型コロナは「中国病」どころかアメリカ病だ

  • 2

    韓国ネット民、旭日旗めぐりなぜかフィリピンと対立し大炎上に

  • 3

    「お疲れさまでした」1人の中国人から、安倍前首相へ

  • 4

    韓国ネットに新たな闇 犯罪者を晒す「デジタル刑務所…

  • 5

    北朝鮮の韓国乗組員射殺で「終戦宣言を」の文在寅に…

  • 6

    日本がついに動く実物大のガンダムを建造、ファンに…

  • 7

    感染者数・死者数を抑えた国、失敗した国 14カ国の…

  • 8

    安倍政権が推進した「オールジャパン鉄道輸出」の悲惨…

  • 9

    台湾の都市名に添えられた「中国」表記、EUの支援で「中…

  • 10

    トランプ巨額脱税疑惑、スキャンダルの本丸はその先…

  • 1

    韓国ネット民、旭日旗めぐりなぜかフィリピンと対立し大炎上に

  • 2

    中国軍の侵攻で台湾軍は崩壊する──見せ掛けの強硬姿勢と内部腐敗の実態

  • 3

    日本がついに動く実物大のガンダムを建造、ファンに動画が拡散

  • 4

    尖閣問題への米軍介入で中国軍との戦闘は不可避──仮…

  • 5

    中国の台湾侵攻に備える米軍の「台湾駐屯」は賢明か 

  • 6

    北朝鮮の韓国乗組員射殺で「終戦宣言を」の文在寅に…

  • 7

    新型コロナは「中国病」どころかアメリカ病だ

  • 8

    核武装しても不安......金正恩が日本の「敵基地攻撃…

  • 9

    美貌の女性解説員を破滅させた、金正恩「拷問部隊」…

  • 10

    トランプはなぜ懲りずに兵士の侮辱を繰り返すのか(…

  • 1

    安倍首相の辞任で分かった、人間に優しくない国ニッポン

  • 2

    中国人民解放軍、グアムの米空軍基地標的とみられる模擬攻撃の動画公開

  • 3

    【動画】タランチュラが鳥を頭から食べる衝撃映像とメカニズム

  • 4

    反日デモへつながった尖閣沖事件から10年 「特攻漁船…

  • 5

    韓国ネット民、旭日旗めぐりなぜかフィリピンと対立…

  • 6

    日本がついに動く実物大のガンダムを建造、ファンに…

  • 7

    中国軍の侵攻で台湾軍は崩壊する──見せ掛けの強硬姿…

  • 8

    米中新冷戦でアメリカに勝ち目はない

  • 9

    尖閣問題への米軍介入で中国軍との戦闘は不可避──仮…

  • 10

    アラスカ漁船がロシア艦隊と鉢合わせ、米軍機がロシ…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メールマガジン登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら
World Voice

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!