ニュース速報

ワールド

アングル:仏大統領選でも大量の偽ニュース、次はドイツ標的か

2017年04月23日(日)11時15分

 4月20日、昨年の米大統領選ほどではないものの、23日に最初の投票が行われるフランス大統領選においても、ソーシャルメディアに出回る大量の「偽ニュース」に有権者がさらされていることが明らかになった。写真は仏大統領候補のポスターを眺める男性。パリ近郊で19日撮影(2017年 ロイター/Christian Hartmann)

[20日 ロイター] - 昨年の米大統領選ほどではないものの、23日に最初の投票が行われるフランス大統領選においても、ソーシャルメディアに出回る大量の「偽ニュース」に有権者がさらされていることが明らかになった。

ロイターが入手した英オックスフォード大学の調査によると、ツイッター上でシェアされた政治関連リンクの4分の1は偽情報で占められていることがあったという。同調査は21日に発表される予定。

こうした調査は、ロシアが米大統領選に対して仕掛けたサイバー攻撃を、欧州でも再現しようとしているとの米独仏当局者の主張に対する新たな論拠となっている。

「米国で多くの有権者がシェアしていたよりも質の良い情報を、フランスの有権者はシェアしている。それはドイツの有権者が共有しているニュースや情報の質とほぼ変わらない」と、オックスフォード大学インターネット研究所の調査は指摘している。

今回の調査ではツイッター上の過去1週間分のデータを使用しているが、偽情報の拡散についてはフェイスブックの方が大きな役割を担っていると、仏大統領選でのソーシャルメディア上の不正行為を研究しているパリ第8大学のケバン・リモニエ氏は指摘する。

フェイスブックは最近、フランス国内で自動投稿されているとみられるアカウント3万件を停止した。同社はスパム対策としているが、それら多くのプロフィールは政治的動機に基づいた偽情報やプロパガンダを流布していた。

自動投稿が可能なツイッター上では、昨年の米大統領選でドナルド・トランプ候補を応援していたのと同じアカウントの多くが、陰謀説や極右政党の見方を推進する方へとその重心を移している。リモニエ氏と、米連邦捜査局(FBI)の元捜査官で現在はジョージ・ワシントン大学のシニアフェローを務めるクリントン・ワッツ氏はそう指摘する。

<ロシアはドイツにシフト>

「『ボット』と呼ばれる自動投稿システムによる、ロシアからのアカウントとみられるトランプ支援グループは、すでにドイツに移っている」とワッツ氏は語る。「トランプ支持者アカウントの約3分の1は、今度はドイツ総選挙に影響を与えようとしているようだ」

今週発表された別の民間調査でも、ソーシャルメディアにおける偽ニュースと本物のニュースの割合は、今回のオックスフォード大学による調査結果と同程度の割合だった。そうした偽ニュースの大半は「ロシアの影響を受けた」ソースから来ていると、同調査は指摘している。

オックスフォードの研究者らによると、昨年11月の米大統領選投票日を控えた数日間のソーシャルメディア上のトラフィックを調査した結果、ミシガン州の有権者は、同程度の偽ニュースと正しいニュースを互いにシェアしていた。

一方、それほど対立的ではなかった今年2月のドイツ大統領選における直前調査では、偽ニュースと本物のニュースの割合は1対4だったという。

「概して、米国の有権者は、国政選挙前の肝心な時期に、主要政策の公開討議について非常に質の悪いニュースや情報をシェアしていた」と、オックスフォード大学インターネット研究所のフィリップ・ハワード所長は語った。「ドイツとフランスの有権者はいずれも、シェアしたジャンクニュースの量はそれよりずっと少ない」

(Mark Hosenball記者、Joseph Menn記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

ロイター
Copyright (C) 2017 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

GMメキシコ工場で生産を数週間停止、人気のピックア

ビジネス

米財政収支、6月は270億ドルの黒字 関税収入は過

ワールド

ロシア外相が北朝鮮訪問、13日に外相会談

ビジネス

アングル:スイスの高級腕時計店も苦境、トランプ関税
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「裏庭」で叶えた両親、「圧巻の出来栄え」にSNSでは称賛の声
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 5
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 6
    主人公の女性サムライをKōki,が熱演!ハリウッド映画…
  • 7
    セーターから自動車まで「すべての業界」に影響? 日…
  • 8
    トランプはプーチンを見限った?――ウクライナに一転パ…
  • 9
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 10
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 7
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 8
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中