ニュース速報
ビジネス

川崎重と独タウルス社、技術協力を検討 巡航ミサイルのエンジンで=関係者

2025年10月17日(金)14時44分

 川崎重工業とドイツの防衛企業タウルス・システムズが、巡航ミサイル向けのエンジン技術で協力を検討していることが分かった。写真は同社のロゴ。パリで2018年10月撮影(2025年 ロイター/Benoit Tessier)

John Geddie Nobuhiro Kubo

[東京 17日 ロイター] - 川崎重工業とドイツの防衛企業タウルス・システムズが、巡航ミサイル向けのエンジン技術で協力を検討していることが分かった。事情を知る複数の関係者が明らかにした。タウルスが川崎重工の技術に関心を寄せており、日本とドイツの共同開発に発展する可能性がある。タウルスの巡航ミサイルを巡っては、ドイツがウクライナに供与する議論がたびたび浮上している。

同関係者らによると、両社は5月に東京で開かれた防衛装備の展示・商談会「DSEI」に合わせて覚書を結んだ。タウルスは、川崎重工が開発するエンジンが軽量で高効率と評価。自社の巡航ミサイルに技術を取り入れたい意向で、協力を打診したという。

関係者の1人は、現行のタウルス製ミサイルの改良や新型ミサイルの共同開発など複数の協力の形態が考えられると話す。

武器の輸出や技術協力は、政府間の枠組みの下で行われる。日本は、防衛装備移転三原則で武器の輸出や技術移転を制限している。前出と別の関係者は、ミサイル向けエンジンの輸出は難しいとする一方、共同開発の形であれば制度上可能だと説明する。

川崎重工はロイターの取材にコメントを控えた。タウルスの親会社である欧州の防衛大手MBDAは、現時点でコメントできることはないとした。装備移転に関わる日本の防衛装備庁は「個別具体的な案件の調整状況などについては回答を控える」とした上で、「具体的な移転に当たっては、防衛装備移転三原則及び運用指針に従って、移転の可否を厳格に審査していく」と回答した。

タウルスの巡航ミサイルは「トーネード」や「F15」など戦闘機から発射するタイプで、射程は500キロ以上。4月に就任したドイツのメルツ首相がウクライナへの供与に前向きな発言をして以降、是非を巡って同国内で議論が起きている。ロシアは、ドイツが同ミサイルを供与すれば戦争に直接関与したとみなすと主張している。

ロイターは9月、ドイツ政府が約81の国防関連事業について年末までに議会の承認を求める計画だと報じた。戦闘機「ユーロファイター」の調達や、タウルス製巡航ミサイルの改良などが含まれる。

ドイツ軍は「タウルスNeo」と呼ばれる新型ミサイル約600発の購入を計画しており、納入は2029年に始まる見通し。スペインと韓国も、タウルスのミサイルを運用している。

川崎重工は、自衛隊向けに島しょ防衛用の対艦誘導弾を開発中。ターボファンを採用した新型エンジンは従来のものより小型で燃費効率が良く、航続距離が長いとしている。

タウルスは、現行の巡航ミサイルに米ウィリアムズ・インターナショナルのエンジンを採用している。

(John Geddie、久保信博 編集:田中志保)

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

過度な為替変動に警戒、リスク監視が重要=加藤財務相

ワールド

アングル:ベトナムで対中感情が軟化、SNSの影響強

ビジネス

S&P、フランスを「Aプラス」に格下げ 財政再建遅

ワールド

中国により厳格な姿勢を、米財務長官がIMFと世銀に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 2
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口減少を補うか
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 5
    【クイズ】世界で2番目に「金の産出量」が多い国は?
  • 6
    大学生が「第3の労働力」に...物価高でバイト率、過…
  • 7
    【クイズ】サッカー男子日本代表...FIFAランキングの…
  • 8
    疲れたとき「心身ともにゆっくり休む」は逆効果?...…
  • 9
    ビーチを楽しむ観光客のもとにサメの大群...ショッキ…
  • 10
    【クイズ】世界で2番目に「リンゴの生産量」が多い国…
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 3
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 4
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 5
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 10
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中