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アングル:銀価格が過去最高を更新、金上昇などプラス材料重なる

2025年10月09日(木)14時35分

銀価格が10月8日に過去最高を更新した。写真はガラスびんに入った金と銀の粒。シベリアのクラスノヤルスクにある非鉄金属工場で2022年3月撮影(2025年 ロイター/Alexander Manzyuk)

Polina Devitt Anjana Anil

[8日 ロイター] - 銀価格が8日に過去最高を更新した。金相場の上昇、地政学的・経済的リスクが続く中での実物資産への投資需要の高まり、そして米国の利下げ観測などが追い風となった。

銀現物は1オンス=49.57ドルと史上最高値を記録した。貴金属で産業用金属でもある銀は年初来で70%値上がりし、このままの流れなら年間で2010年以来最大の上げ幅となる。

不安定な時期に「価値の保存手段」と見なされることが多い金は8日に初めて1オンス=4000ドルを突破。銅も一時、16カ月ぶりの高値をつけた。

マーケットパルスのアナリスト、ザイン・ヴァウダ氏は「現在、多くの個人投資家やその他の市場参加者が安全資産として銀を利用しており、こうした需要の高まりが価格上昇を支えている」と指摘。「構造的な供給不足と強力な産業用需要を踏まえると、銀価格は向こう6カ月ほどで55ドルに達する可能性がある」と述べた。

銀の上昇を支えている他の要因の一つが、ロンドンの現物市場における流動性の引き締まりだ。同市場は現物取引の主要拠点だが、今年は米ニューヨーク商品取引所(COMEX)保有倉庫に向けて銀在庫が大量に流出している。

米国への銀在庫流出は当初、銀が4月の米輸入関税の影響を受けるのではないかとの懸念によるものだったが、実際には銀は課税対象から外れた。

HSBCのアナリスト、ジェームズ・スティール氏はリポートで「こうした懸念から、ロンドンの現物価格と、ニューヨークを拠点とする米シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の先物との間で異常に大きな価格差が生じた。ニューヨークでプレミアムが乗ったことで、金や銀をニューヨークに移すことが利益を生む状況になった」と分析した。

銀が9月に米政府の「重要鉱物」暫定リストに加えられたことで、再び関税が課されるとの思惑が浮上し、COMEXの銀在庫は先週に過去最高を記録した。

ロンドン地金市場協会(LBMA)によると、9月末時点のロンドンの銀在庫は2万4581トンと8月から0.3%減少。評価額は365億ドルだった。

銀が金を追いかける形で値上がりしたことから、足下で金銀比価(金1オンスを購入するのに必要な銀の量)は82オンスとなり、4月の105オンスから大幅に低下した。

メタルズ・フォーカス金銀部門ディレクター、マシュー・ピゴット氏は「年央には銀が金をアンダーパフォームし、金銀比価は100まで上昇したが、これは銀が産業用金属であるため貿易を巡る懸念の影響を受けたことが理由だ。銀は今後も金の値動きに追随し、2026年には60ドルを突破する見通しだ」と述べた。

銀はマクロ経済および金融要因が投資需要を押し上げる一方、太陽光発電、電子機器、電気自動車(EV)といった分野からの強い需要見通しも価格を支えている。

モルガン・スタンレーによると金と同様に、今年は銀を裏付けとする上場投資信託(ETF)への資金流入が急増。1─5月は中国の太陽光パネル設置増加で産業用の需要も堅調だった。

ただ、銀ETFの保有量がさらに増加する余地がある一方、太陽光需要は伸びが鈍化すると予想され、銀は金に比べると今後、価格上昇ペースがやや劣る可能性があるという。

ロイター
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