アングル:米利下げ再開で外国勢の米資産ヘッジ割安に、ドル安対応進む

10月3日、米連邦準備理事会(FRB)が利下げを再開する中、外国人投資家はドルへのエクスポージャーに対するヘッジコストが安くなるため、さらなる通貨安から米国での資産を守る姿勢をとる可能性が高い。 米首都ワシントンで2022年6月撮影(2025年 ロイター/Sarah Silbiger)
Laura Matthews Saqib Iqbal Ahmed
[ニューヨーク 3日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)が利下げを再開する中、外国人投資家はドルへのエクスポージャーに対するヘッジコストが安くなるため、さらなる通貨安から米国での資産を守る姿勢をとる可能性が高い。
運用会社やアナリストによると、9月の利下げで米国と他の先進国との金利差が縮小、海外の年金、政府系ファンド、機関投資家のヘッジコスト引き下げにつながった。
ドル指数は今年約10%下落しているが、外国人投資家が米国の貿易・関税政策が米国資産に与える影響を懸念し、ヘッジを活発化させていることも一因という。
ラッセル・インベストメンツ(ロンドン)で債券・外国為替のソリューション戦略を担当するバン・ルウ氏は「FRBによる利下げサイクルの再開を待ち望んでいる投資家はヘッジ比率を引き上げる傾向にある」と話す。
デリバティブなどの金融商品で相殺ポジションをつくるヘッジにより、既存ポートフォリオの損失が抑えられる。多くの場合、フォワードやスワップを通じてドルを売ることになるため、ヘッジの動きが活発化すれば低迷するドルにさらなる弱材料となる。
<新たなヘッジの必要性>
国際決済銀行(BIS)が6月に発表した報告書によると、ヘッジコストの高さとドルに対する強気な見方が近年の為替ヘッジ比率を抑制する2つの大きな要因となっている。
長年にわたるドル高により、外国人投資家は米国資産をヘッジする必要がなかった。それが今、変わりつつある。
今年に入りドル相場が大幅に下落し、今後もドル安が続く可能性がある中、ヘッジは為替相場の不利な動きによる打撃を和らげる一助となる。
年内あと2回程度の0.25ポイント利下げ見込みは、コスト面でためらっている投資家にとってヘッジ強化の誘因になる可能性がある。
<為替変動から守る>
モルガン・スタンレーによると、外国勢は現在30兆ドル以上を米国の株式や債券に投資しており、そのうち8兆ドルは欧州の投資家が保有している。
コンベラ(メルボルン)の市場インサイト担当責任者スティーブ・ドゥーリー氏は「米国(株式)市場の大幅上昇と米ドルの急落は異例だが、前代未聞ではない。われわれはこの乖離の一因はヘッジの拡大と考えている」と語る。
ドイツ銀行による7月の調査ノートによると、ドイツとオーストリアの株式投資家はヘッジ比率を年初の20─30%から60─70%に高めている。
マッコーリー(ニューヨーク)のグローバル為替・金利ストラテジスト、ティエリー・ウィズマン氏は「今後数週間のうちに、海外投資家によるドルヘッジの動きが再び出てくるだろう」と述べた。
ミルテックFXの調査によると、欧州企業の86%が現在、予想される為替リスクをヘッジしており、2023年の67%から上昇。その平均ヘッジ比率は43%から49%に高まっている。
メシロー・カレンシー・マネジメントのジョセフ・ホフマン最高経営責任者(CEO)によると、国際投資家のシフトは短期金利の優位性が主因ではなく、「FRBの政策、政治的不確実性の高まり、持続的な財政赤字に根ざしたドルに対する弱気な構造的見解によるもの」という。
<気になるコストは?>
それでも、ヘッジコストが低ければ、価格面からヘッジの強化を控えていた投資家も引き寄せられるだろう。
例えば、日本とスイスの投資家にとって、現在の金利に基づく年4%のヘッジコストは依然として大きなハードルだ。ユーロをベースとする他の投資家のヘッジコストは年2%程度となっている。
ラッセルのルウ氏は「ユーロ圏の投資家にとって今後12カ月の間にヘッジコストが1%以下になる可能性があるが、その辺りがコストがそれほど気にならなくなる心理的な節目ではないかと思う」と話した。