FOMC、最低1人が利下げ主張か 大勢は金利据え置きで関税リスク見極めへ

7月28日、米連邦準備理事会(FRB)は29-30日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利の据え置きを決める公算が大きい。写真は改修中のFRB本部。ワシントンで24日代表撮影(2025年 ロイター)
Ann Saphir
[28日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は29-30日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利の据え置きを決める公算が大きい。ただFOMCメンバーの間で見解が分かれ、多ければ2人、あるいは少なくとも1人が利下げを主張するかもしれない。
FOMC内では引き続き、労働市場の軟化よりもインフレのリスクを重視するというのが多数意見。トランプ大統領の関税措置が、物価上昇率を2%の目標に収めるFRBの取り組みを台無しにする恐れがあると懸念されるからだ。
先週米国は日本と15%の関税率で合意し、欧州連合(EU)も同水準を受け入れたことで、各国に適用される関税率はトランプ氏が4月2日に「相互関税」を発表した時点で想定された水準よりずっと低くなる確率が高まった。
それでも米国の実効輸入関税率は90年ぶりの高さに達し、その影響は家計の購買行動にも表れ始めている。家具や衣料品などの価格が高騰し、6月の消費者物価指数(CPI)上昇率は年率で3.5%まで押し上げられた。
ごく最近、40年ぶりの物価高を経験した後だけに、FRBは急速な物価上昇が家計をおびえさせ、より広範なインフレの連鎖を引き起こすのではないかと不安を感じている。
FRBのパウエル議長は、そうした展開は数多く考えられるシナリオの1つに過ぎないと冷静にみているものの、特に足元の失業率が4.1%と完全雇用近辺の水準にある以上、FRBは利下げを待てる余裕があると主張している。
ただ他のデータや、トランプ氏の減税などの経済政策に関する見通しも加味すると、FOMCメンバーの認識にはばらつきがある。
野村証券のアナリストチームは、目先の金融政策への見方でウォラー理事およびボウマン金融監督担当副議長と、他のFOMCメンバーの間に明確な違いがある点を考え、今週のFOMCでウォラー氏とボウマン氏が25ベーシスポイント(bp)の利下げを提案すると予想した。多数意見に2人の反対が出れば、1993年以降で初めてとなる。
来年5月に任期を終えるパウエル氏の後任候補の1人とされるウォラー氏は、民間雇用の伸びにブレーキがかかっていると分析し、金融環境が緩和的にならなければ企業がレイオフに動くのではないかと懸念している。
ボウマン氏も労働市場の環境悪化を心配し、それを防ぐ上で利下げが妥当という考えを持つ。
また2人とも関税が持続的なインフレにつながるとの想定には懐疑的だ。
<強弱材料が交錯>
30日のFOMC声明発表に先立って明らかになる第2・四半期の米国内総生産(GDP)速報値は、プラス成長に転じると予想される。
しかし関税引き上げ前の駆け込み輸入で落ち込んだ第1・四半期の反動という側面が強く、FRBとしても素直に好材料と受け止められないだろう。
EYパルテノンのチーフエコノミスト、グレゴリー・ダコ氏は「輸入の急激な減少が第2・四半期GDPを押し上げるとはいえ、関税に起因するコスト圧力や根強い政策不透明感、厳しい移民規制、金利高止まりが相まって雇用、企業投資、家計消費にダメージを与え続けている。米経済は複雑な潮流を進み続けており、基調的な動きをはっきり読み取りにくくなっている」と指摘した。
プラス要素に目を向ければ、米経済の3分の2を占める個人消費はかなり堅調で、6月の小売売上高も予想を上回った。
家計の手元流動性も改善していることが先週のデータからうかがえる。
FRBのデータは、銀行の消費者・企業向け融資が過去2年余りで初めて前年比で増加に転じたことを示した。
ダラス地区連銀の調査では、5月下旬に融資規模と資金需要がともに上向き始めたことが分かる。
一方で雇用の伸びは鈍化し、けん引役もごく少数のサービス業に限定されるなど裾野が狭まっている。
住宅・建設セクターは明らかに勢いが弱まっており、期間30年の固定金利住宅ローンが7%近くで推移している影響が感じられる。
建設支出は9カ月連続マイナスと、2007-09年の金融危機以降初めての長期低迷を記録。6月の一戸建て住宅新規着工戸数は約1年ぶりの低水準にとどまり、新築住宅と中古住宅の販売はいずれもさえない。
シティのエコノミストチームは「住宅需要の弱さは、金利がなお引き締め的水準にある確かな証拠だ。労働市場軟化と不確実性も高さも需要を圧迫しているかもしれない」と記した。