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NY市場サマリー(10日)S&P・ナスダック最高値 円横ばい 10年債利回り上昇

2025年07月11日(金)07時29分

<為替> ドルがユーロやスイスフランなどの主要通貨に対して上昇した。トランプ米大統領が打ち出している関税措置について、最悪のシナリオが具現化する公算は小さいとの見方が出ている。

マネックスUSAのトレーディング部門責任者、フアン・ペレス氏は、トランプ氏が掲げる関税措置による変動は予想されるものの、米経済は世界貿易システムの中心であるとの見方が変わっていないことがドルの支援要因になっていると指摘。「奇妙なことに、トランプ氏の関税を巡る議論とその突発的な性質で、『レバレッジ』という強力な概念があることが示されている」とし、「米国自身が混乱を引き起こしているときにすべきことは、ドルを保有することだ」と述べた。

トランプ大統領は前日、ブラジルのルラ大統領に宛てた書簡で、8月1日からブラジルからの輸入品に対し50%の関税を課すと表明。ルラ大統領はこの日、「米国がブラジルに50%の関税を課す場合、ブラジルも米国に対し50%の関税を課す」と述べ、米国に対する対抗措置を取る可能性を示唆した。

こうした中、ブラジルレアルは一時2.8%下落。終盤の取引までには下げ幅を縮小し、1ドル=5.5433レアルと0.56%安で推移している。

ただ、ブラジルを除き、トランプ大統領が貿易相手国に送付した書簡に記載された関税率は4月2日に発表されたものとほぼ同水準だったことで、米国の関税措置を巡る動向は市場でおおむね落ち着いて受け止められている。

終盤の取引で主要通貨に対するドル指数は0.27%高の97.638。ドル/円は146.235円とほぼ横ばい。ユーロ/ドルは0.23%安の1.1692ドル。

暗号資産(仮想通貨)ビットコインは11万3820.49ドルに上昇し、過去最高値を再び更新。機関投資家からの需要増のほか、トランプ米大統領の好意的な政策が支援要因になっている。

NY外為市場:[USD/J]

<債券> 指標10年債利回りが小幅上昇した。新規失業保険週間申請件数が予想外に減少したことが材料視された。来週15日の消費者物価指数(CPI)の発表を控え、関税がインフレに与える影響に注目が集まっている。

米労働省が発表した4日までの1週間の新規失業保険申請件数(季節調整済み)は5000件減の22万7000件と予想外に減少し、7週間ぶりの低水準となった。一方、1週間の継続受給件数は2021年11月以来の高水準に上昇した。

インベスコの債券チーフストラテジスト兼マクロ調査責任者のロブ・ワルドナー氏は「失業保険申請件数は非常に堅調だった」ものの、労働市場の軟調を示すより多くの兆候があると指摘。「労働市場は一段と停滞しており、労働力の囲い込みが起きている」とし、労働市場の流動性が低下し、仕事を得にくい状況になっているという見方を示した。

インベスコはインフレが今年後半にピークを迎え、来年には再び鈍化し、連邦準備理事会(FRB)の利下げを支援すると予想している。   

2年債利回りは0.6ベーシスポイント上昇の3.868%。

指標となる10年債利回りは0.4bp上昇の4.346%。

一方、30年債利回りは1.4bp低下の4.861%となった。

財務省がこの日実施した220億ドルの30年債入札は堅調な需要を集めた。最高落札利回りは4.889%で、入札前取引とほぼ同水準となった。需要の指標となる応札倍率は2.38倍と平均を下回った。

フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込むFRBによる年内の利下げ幅は計53bp。 

米金融・債券市場:[US/BJ]

<株式> 続伸し、S&P総合500種とナスダック総合が終値で過去最高値を更新した。投資家がトランプ大統領の最新の関税をかわす中、デルタ航空の好調な見通しやエヌビディア株の上昇が追い風となった。

デルタ航空は第3・四半期と通期の利益見通しが市場予想を上回り、株価は12%上昇した。

他の航空株も買われ、ユナイテッド航空は14.3%高、アメリカン航空は12.7%高となった。景気のバロメーターとされるダウ輸送株20種は2月下旬以来の高値を付けた。

半導体大手エヌビディアは0.7%上昇し、終値ベースで初めて時価総額が4兆ドルを上回った。

労働省が10日発表した4日までの1週間の新規失業保険申請件数(季節調整済み)は5000件減の22万7000件で、予想外に減少した。4日は独立記念日で祝日前後のデータは変動しやすいものの、7週間ぶりの低水準となった。

ジャニー・モンゴメリー・スコットのチーフ投資ストラテジスト、マーク・ルスキーニ氏は、デルタ航空の最新情報と「かなり控えめな」失業保険申請件数が投資家を安心させたとし、「全体として、前日に見られたリスクオンムードの再開につながった」と指摘。投資家は関税がインフレと失業に及ぼす潜在的な脅威に対して「ますます鈍感になっている」と述べた。

S&Pが終値で最高値を付けるのは6月27日以降5回目で、年初以降では8回目。ナスダックは6月27日以降で6回目となる。

ダウ工業株30種は192.34ドル高で終了。昨年12月初めに付けた終値での最高値を1%ポイント弱下回る水準に迫った。

S&Pの主要11セクターでは9セクターが上昇した。通信サービスは約0.5%、情報技術は0.1%、それぞれ下落した。

大型株はまちまち。ネットフリックス、マイクロソフト、メタ・プラットフォームズは下落。電気自動車(EV)大手テスラは年次株主総会を11月に開催すると発表し、4.7%上昇。S&Pを押し上げた。投資家グループが法的義務を理由に株主総会の日程を決めるよう求めていた。

他の銘柄ではシリアルメーカーのWKケロッグが30.6%の大幅高となった。チョコレート菓子「フェレロロシェ」を製造するイタリアのフェレロによる約31億ドルの買収案受け入れで合意した。

ニューヨーク証券取引所では値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を2.23対1の比率で上回った。ナスダックでも1.38対1で値上がり銘柄が多かった。

米取引所の合算出来高は181億6000万株。直近20営業日の平均は183億1000万株。

米国株式市場:[.NJP]

<金先物> ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金塊先物相場は、銅先物の上昇を眺めた買いが波及し、続伸した。

中心限月8月物の清算値(終値に相 当)は前日比4.70ドル(0.14%)高の1オンス=3325.70ドル。 

トランプ米大統領は9日夜、幅広い製品に使われる戦略物資としての位置づけから、銅の輸入に50%の関税を課すと表明した。また、資源国であるブラジルに50%の関税を賦課するとの書簡を送付。いずれも8月1日に発動する。

これらの発表を受け、この日は銅先物相場が上昇し、その他の金属商品にも買いが波及。時間外取引で金相場は堅調に推移した。

しかし、米労働省が朝方発表した週間新規失業保険申請件数は4週連続で減少し、労働市場の底堅さを示唆する内容。また、セントルイス連銀のムサレム総裁は午前の会合で、 高関税政策による物価への影響が一時的かどうかの判断は「時期尚早だ」と述べ、早期利下げに慎重な姿勢を明らかにした。

米連邦準備制度理事会(FRB)が前日公表した6月開催分の連邦公開市場委員会(F OMC)議事要旨によると、7月29─30日のFOMCでの利下げ検討を支持するメンバーは2人にとどまっていた。利下げ再開が9月以降になるとの見方が再び米長期金利を押し上げ、外国為替市場ではドルが主要通貨に対し上昇。ドル建てで取引される金の割高 感が意識され、上値の重い相場展開となった。 

NY貴金属:[GOL/XJ]

<米原油先物> ニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油先物相場は、米高関税政策を巡る警戒感から売り込まれ、4営業日ぶりに反落した。

米国産標準油種WTIの中心限月8月物の清算値(終値に相当)は、前日比1.81ドル(2.65%) 安の1バレル=66.57ドル。9月物は1.59ドル安の65.38ドルだった。 

トランプ米大統領は9日、ブラジルからの輸入品に50%の関税を課すとする書簡をSNSで公表。ブラジルを含め計8カ国に関税を通知した。

また、トランプ氏は同日、戦略物資とされる銅に対し50%の関税を8月1日から課すと表明。8日には、医薬品や半導体などに対する関税導入を近く発表する考えも示していた。

こうした中、米国の高関税政 策が世界的な経済成長に影響を及ぼし、エネルギー需要の鈍化を招くとの警戒感が改めて広がり、原油売りが先行。持ち高調整や値頃感による買い戻しが入る場面があったものの、 相場はほぼ終日、売り圧力がかかり、66ドル台で推移した。

米長期金利の上昇を受け、外国為替市場でドル売り・ユーロ買いの流れが反転したこともドル建てで取引される商品の割高感につながり、原油を圧迫。前日までの3日続伸した 後を受けた利益確定の売りも誘われたもようだ。 

NYMEXエネルギー:[CR/USJ]

ドル/円 NY終値 146.25/146.    

27

始値 146.10    

高値 146.78      

安値 146.09      

ユーロ/ドル NY終値 1.1700/1.17    

01

始値 1.1727    

高値 1.1729      

安値 1.1663      

         

  米東部時間      

30年債(指標銘柄) 17時05分 98*04.5 4.8684

0 %

  前営業日終値 98*01.0 4.8750  

0 %

10年債(指標銘柄) 17時05分 99*06.5 4.3498

0 %

  前営業日終値 99*08.5 4.3420  

0 %

5年債(指標銘柄) 17時05分 99*24.0 3.9306

0 %

  前営業日終値 99*25.5 3.9200  

0 %

2年債(指標銘柄) 17時05分 99*24.6 3.8721

3 %

  前営業日終値 99*25.2 3.8620  

5 %

         

   終値 前日比 %  

ダウ工業株30種 44650.64 +192.34 +0.43

 前営業日終値 44458.30      

ナスダック総合 20630.67 +19.33 +0.09

 前営業日終値 20611.34      

S&P総合500種 6280.46 +17.20 +0.27

 前営業日終値 6263.26      

         

COMEX金 8月限 3325.7 +4.7  

前営業日終値 3321.0      

COMEX銀 9月限 3730.5 +67.5  

前営業日終値 3663.0       

北海ブレント 9月限 68.64 ‐1.55  

前営業日終値 70.19      

米WTI先物 8月限 66.57 ‐1.81  

前営業日終値 68.38      

CRB商品指数 300.3689 ‐1.2828  

前営業日終値 301.6517      

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