ニュース速報
ビジネス

米FRB、15日から戦略見直し協議 インフレと雇用のバランス焦点

2025年05月15日(木)19時05分

 米連邦準備理事会(FRB)は15日から2日間、政策運営の戦略見直しについて協議する。写真は、パウエルFRB議長。5月7日、ワシントンで撮影(2025年 ロイター/Kevin Lamarque)

Howard Schneider

[ワシントン 15日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は15日から2日間、政策運営の戦略見直しについて協議する。雇用に関する表現の変更や、より迅速なインフレ対策が盛り込まれる可能性がある。

パウエル議長の下でFRBは2020年に戦略を転換し、完全雇用の目標により重点を置いた。労働市場の逼迫が必ずしもインフレを加速させるとは限らないとの認識が広まり、失業率が低いことを理由とした利上げは行わないという方針を打ち出した。

しかし、低インフレの時期を補うために一時的に高いインフレ率を容認するという方針は、投資家の混乱を招くとの指摘があった。また、この戦略は2010─20年に特有の経済状況に対応したもので、その後の急激なインフレ高進を受けて、インフレ重視の政策運営への回帰を求める声が高まっている。

米クリーブランド地区連銀のハマック総裁は先週、ロイターのインタビューで、FRB当局者の間では、毎回の米連邦公開市場委員会(FOMC)で必要な対応を取れるよう「十分に柔軟な」アプローチが求められているとの認識が広がっていると指摘した。

「議論は幅広く、開かれている」と述べ、特に20年の声明で変更された点について、それらを維持することが適切かどうかを検討していると説明した。「経済には現在どのようなリスクが存在するのか。そして、FRBの行動を制約せず、かつさまざまな状況へのFRBの対応方針を国民に明確に伝える枠組みをどのように構築するかが問われている」と語った。

20年の新戦略はそれまでの10年間の経済の動向を基に作成されたが、新型コロナの世界的流行によるサプライチェーンの混乱や連邦政府の大規模な景気刺激策が物価高騰を引き起こした結果、米経済の実情とはかけ離れたものとなった。FRBは完全雇用の回復を優先したためにインフレ対策で後手に回ったとの批判を浴びた。

しかし、パウエル議長の元顧問で、現在は米ジョンズ・ホプキンス大学金融経済センター研究員であるジョン・フォースト氏は、基本的なアプローチは依然として適切との見解を示した。

「(20年の)枠組みの修正自体は(インフレに)何の影響も与えなかったと考えている」と述べた。さらに今後の戦略見直しにおいては、インフレなどのリスクがない限り、失業率を上昇させるような措置は取るべきでないという従来の方針を維持すべきとの考えを示した。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

再送-米4月PPI、前年比の伸び2.4%に減速 前

ビジネス

米4月小売売上高、伸び0.1%に減速 関税前の駆け

ワールド

ウクライナと「長期平和確立」目指す、根本原因排除=

ビジネス

雇用とインフレに関する戦略の再考が必要=FRB議長
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    加齢による「筋肉量の減少」をどう防ぐのか?...最新研究が示す運動との相乗効果
  • 2
    宇宙から「潮の香り」がしていた...「奇妙な惑星」に生物がいる可能性【最新研究】
  • 3
    ヤクザ専門ライターが50代でピアノを始めた結果...習い事、遅かった「からこそ」の優位とは?
  • 4
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食…
  • 5
    戦車「爆破」の瞬間も...ロシア軍格納庫を襲うドロー…
  • 6
    宇宙の「禁断領域」で奇跡的に生き残った「極寒惑星…
  • 7
    対中関税引き下げに騙されるな...能無しトランプの場…
  • 8
    トランプに投票したことを後悔する有権者が約半数、…
  • 9
    サメによる「攻撃」増加の原因は「インフルエンサー…
  • 10
    「2025年7月5日天体衝突説」拡散で意識に変化? JAX…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    加齢による「筋肉量の減少」をどう防ぐのか?...最新研究が示す運動との相乗効果
  • 3
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因は農薬と地下水か?【最新研究】
  • 4
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 5
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 6
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 7
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 8
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 9
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 10
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    加齢による「筋肉量の減少」をどう防ぐのか?...最新…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中