ECB、ドル需要検証を銀行に要請 トランプ政権下で資金調達リスク

欧州中央銀行(ECB)の監督当局が、域内の一部銀行に対し、緊迫した状況における米ドル需要を検証するよう求めていることが分かった。2024年6月撮影(2025年 ロイター/Wolfgang Rattay)
[ロンドン 14日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)の監督当局が、域内の一部銀行に対し、緊迫した状況における米ドル需要を検証するよう求めていることが分かった。トランプ政権下で米連邦準備理事会(FRB)の資金援助に頼れなくなるシナリオを想定しているという。協議に詳しい関係者3人が明らかにした。
ユーロ圏の銀行の資金調達ニーズの約5分の1は米ドル建てとなっている。金融機関は短期資金を市場で調達しているが、金融危機時にはこうした市場が突然閉鎖される可能性がある。欧州の中央銀行は過去に、この不足分を補うためにFRBからドルを借り入れていた。
FRBは、世界の準備通貨の不足を緩和し、金融ストレスが米国に波及するのを防ぐため、ECBや他の主要中央銀行と融資協定を結んでいる。
ECBの監督協議に詳しい関係筋2人は、FRBが今回を含め、こうしたバックストップを守らないと示唆したことは一度もないと述べた。
それでも、トランプ米大統領が欧州の同盟国との長年の防衛・貿易協定に疑問を呈したことで、同盟国が不信感を募らせており、FRBの方針が変わる可能性が懸念されているという。
そのためECBの監督当局は、域内の金融機関に対し、負債を返済するのに十分な、あるいは信頼できるドル建て資金を保有しているかなど、バランスシートのギャップを検証するよう緊急に要請。一部銀行に対しては、場合によってはドル資金へのエクスポージャーを減らすために業務の一部変更を検討するよう要求しているという。
ECBとFRBはコメントを控えた。ホワイトハウスもコメント要請に応じなかった。
FRBはホワイトハウスから独立しているが、トランプ大統領はパウエル議長を頻繁かつ公然と批判しており、将来FRBの独立性が低下する可能性を懸念する声も上がっている。
現時点ではドル資金調達市場にストレスはかかっていないものの、予防的な監督要請は米国の最も近い同盟国の間でどれほど不安が広がっているかを示している。
ある欧州最大手銀行の一つは、FRBの融資が受けられない可能性があるシナリオは、数カ月前はゼロ%だったが、現在は5%のリスクがあるとみているという。
関係者は、このリスクレベルは「かなり大きい」と述べ、エクスポージャーの削減や代替策の模索などドル不足への対処法が、今後の銀行のリスクに関する協議の一部となるとの見通しを示した。