経済動向は不確実性高い、丁寧に見ていく=植田日銀総裁

5月8日午前、日銀の植田和男総裁(写真)は参院財政金融委員会で、基調的な物価上昇率が2%に向けて上昇する見通しが維持される限り、金融緩和度合いを適切なペースで調整していくと述べた。写真は1日、都内で撮影(2025年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
Takahiko Wada
[東京 8日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁は8日午前、参院財政金融委員会で、基調的な物価上昇率が2%に向けて上昇する見通しが維持される限り、金融緩和度合いを適切なペースで調整していくと述べた。ただ、米国の高関税政策で経済動向は不確実性が高く、丁寧に見ていきたいと話した。柴慎一委員(立憲)の質問に対する答弁。
日銀は1日に公表した展望リポートで経済・物価見通しを引き下げた。植田総裁は、米国の関税政策に伴う経済の下押しなどが日本の物価にマイナスの影響を及ぼす経路も「無視できない」とする一方で、基調的な物価上昇率は見通し期間の後半に向けて「2%に向けての歩みを再開するとみている」と述べた。
足元の物価高をけん引している食料品価格については、先行きの不確実性が大きいものの、前年比上昇率は次第に低下していくと指摘。ただ「食料品価格上昇の影響で予想物価上昇率が変化し、基調的なインフレ率に二次的な影響を及ぼし得る点は注意して見ていきたい」と語った。
4月下旬に出席した20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で受けた印象を聞かれた植田総裁は、現時点で消費や設備投資は堅調な地域が多いものの、家計や企業のマインドには関税政策の影響が表れ始めているとの見方が多かったと述べた。関税政策の帰すうやそれを受けた家計や企業の対応は「不確実性が極めて高い」と、多くの参加者が強調していたと話した。
2013年に策定した政府・日銀の共同声明については、現時点でコメントを差し控えたいとした。柴委員は、金融政策の正常化を進める現在の局面ではデフレ脱却をうたう共同声明は「ちぐはぐなもの」だとして発展的な解消を求めた。