ニュース速報
ビジネス

FRB、年内0.5%利下げ予測維持 不確実性「異常に高まる」と議長

2025年03月20日(木)09時24分

米連邦準備理事会(FRB)は18─19日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を4.25─4.50%に据え置いた。2022年1月撮影(2025年 ロイター/Joshua Roberts)

Howard Schneider Ann Saphir

[ワシントン 19日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は18─19日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、市場の予想通り、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を4.25─4.50%に据え置いた。FRB当局者は年内2回の利下げ見通しを維持したものの、パウエルFRB議長は政策変更を「急いでいない」とし、トランプ政権が打ち出す一連の政策がさらに明確となるまで待つ姿勢を鮮明にした。

パウエルFRB議長はFOMC後の記者会見で、不確実性が「異常なほど高まっている」と指摘した上で、「われわれは行動を急ぐつもりはない」と述べた。

現在の金融政策スタンスは「われわれが直面しているリスクと不確実性に対処する上で十分」とし、「状況がより明確となるまで待つ」ことが現時点で適切だと述べた。経済は堅調で、労働市場の状況は均衡していることにも言及した。

また、トランプ大統領の関税の影響が一因となり、インフレが上昇し始めているとし、インフレ抑制に向けた「進展が年内鈍る可能性がある」とした。

最近のインフレと消費の高まりが関税と関連する可能性は高く、関税発動前に商品を購入する動きによって押し上げられた可能性があるという認識を示した。

同時に、米関税がインフレに与える影響を精査すべきかどうかを判断するのは時期尚早で、物価上昇のどの程度が関税に起因するのかを判断するのは難しいと述べた。

パウエル氏は、すでに発動されている関税措置がどの程度、消費者物価に反映されるかや、これらの関税あるいは他国の報復措置がより持続的な物価上昇圧力を引き起こしているかどうか、さらに最も重要な点として、これら全てが家庭や企業のインフレ期待に影響を与え始めているかどうかを見極めるため、今後数カ月の状況を注視していくと述べた。

トランプ政権発足後の数週間でインフレ期待の指標の一部は上昇したものの、FRBが政策目標を達成する上で最も重要と見なす長期的な指標は「あまり動いていない」と語った。

FRBは成長の鈍化が失業率の上昇につながるかどうかも注視しており、パウエル氏は、インフレがより持続的と判明した場合の政策引き締め、失業率が上昇し始めた場合の政策緩和というどちらも場合にもFRBは行動する用意があると改めて強調した。

現時点でFRBの2つの責務は衝突しておらず、今後の金利決定にある程度の余地があると述べた。

パウエル議長はまた、ミシガン大消費者信頼感データを注視していると述べた。3月速報値では、消費者の5年先の期待インフレ率は関税を巡る懸念などから1993年以来の水準に急上昇した。

消費者心理の急激な悪化の一部は政治情勢の大きな変化を反映している可能性があるとしつつも、「経済に対する根本的な不満は物価水準によるところが大きい」という認識を示した。

FRBはまた、「量的引き締め(QT)」であるバランスシートの縮小ペースを4月から減速させる方針を示した。ウォラー理事は金利据え置きは支持したものの、バランスシート縮小ペースの減速には反対した。

<成長鈍化、物価上振れ見通し>

声明ではトランプ大統領が打ち出す関税について直接言及していないものの、同日公表された最新の経済・金利見通しでは関税による影響をにらみ、2025年の個人消費支出(PCE)価格指数見通しを2.7%と、前回12月時点の2.5%から上方修正した。同時に成長率見通しは前回の2.1%から1.7%に引き下げた。

政策金利については、当局者19人中9人が、25年末時点で3.75─4.00%の範囲になると予想した。年内1回の利下げが適切だとした当局者と、利下げすべきでないとした当局者はそれぞれ4人。2人は3回の利下げが適切との認識を示した。

FRB当局者はリスクが高まる中、年内の見通しは不透明という見解でおおむね一致。声明は「見通しを巡る不確実性は強まっている」とした。

インフレーション・インサイツのオマール・シャリフ氏は、FRBがトランプ政権による「経済政策の変化」を把握しようと苦難していると指摘。最新の経済見通しは「不確実性の高まり」を顕著に浮き彫りにしていると述べた。

LSEGによると、市場が織り込む年内の利下げ幅予想は0.5%強。6月利下げの確率は62.1%で、FOMC声明発表前の57%から上昇した。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

FRB現行策で物価目標達成可能、労働市場が主要懸念

ワールド

トルコ大統領、プーチン氏に限定停戦案示唆 エネ施設

ワールド

EU、来年7月から少額小包に関税3ユーロ賦課 中国

ビジネス

米クリーブランド連銀総裁、「引き締め的な政策」望む
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 3
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナの選択肢は「一つ」
  • 4
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 5
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 7
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中