ニュース速報
ビジネス

FOMCは経済見通しに注目、トランプ関税の影響どう判断

2025年03月18日(火)12時12分

 3月17日、18-19日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、委員会メンバーによる最新の経済・物価見通しが公表される。写真は米ワシントンで2022年6月撮影(2025 ロイター/Sarah Silbiger)

Howard Schneider

[ワシントン 17日 ロイター] - 18-19日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、委員会メンバーによる最新の経済・物価見通しが公表される。トランプ米政権の経済・貿易政策による経済への影響を米連邦準備理事会(FRB)がどう見ているかを知る上で注目度が高い。

昨年12月のFOMCで示された経済物価の予想中央値は、2025年の米経済成長率が2.1%、失業率がわずかに上昇して4.3%、個人消費支出(PCE)物価指数で見た年末のインフレ率が2.5%となっていた。

しかし、これらはトランプ大統領の具体的な経済政策や関税率が明らかになる前に出された予想だ。その後の政策を見て、民間エコノミストは今年の成長率見通しを下方修正し、景気後退に陥る確率が高まったと判断する一方、インフレ率見通しを上方修正している。

今回のFOMCに先立つFRB幹部らの発言からは、3つのシナリオが進行中であることが読み取れる。(1)インフレもしくは景気が減速して追加利下げが可能になる(2)インフレ率がFRB目標の2%を上回り続け、引き締め的な金融政策が長引く(3)インフレ率は望ましい水準に比べて高止まりするが、景気は減速する――の3つだ。

最後のシナリオが現実化した場合、FRBはジレンマに陥り、物価安定と雇用最大化という2つの責務のどちらを優先するかの選択を迫られるかもしれない。

ドイツ銀行のエコノミストらは最近の分析で、FRBがいくつかの難しい判断に直面すると指摘。例えば、関税による物価への影響のうち、どれが自然消滅してどれが根強く残るかなどを見極めるのは難しいと説明した。

米国担当チーフエコノミストのマシュー・ルッゼッテイ氏らのチームは「景気が底堅く推移してインフレ率が上昇するためFRBはおおむね現状の政策を維持するのか、あるいは政府の人員削減に加え、貿易の不透明感に起因する民間の採用停滞が労働市場の急激な悪化を招き、より急速な利下げパスが必要になるのか。いずれの道が正しいか予測するのは容易ではない」と記している。

ドイツ銀の基本シナリオは前者だが、景気後退リスクの高まりも視野に入ってきたという。

S&Pグローバル・レーテイングスの首席米・カナダ・エコノミスト、サティヤム・パンダイ氏はリポートで「関税によるサプライサイド・ショックと移民増加ペースの減速、そして連邦政府職員の削減により長期にわたるマイナスの循環が生まれ、総需要を圧迫する」と予想。1年以内に米国が景気後退に陥る確率は通常時の2倍の25%だとしている。

ただ、足元の経済データはなおしっかりしており、トランプ政権の経済政策は流動的なため、19日に公表されるFRBの経済・物価見通しには民間エコノミストが指摘している点がまだ反映されず、12月の見通しと比べて大きな変化はないかもしれない。

EYのチーフエコノミスト、グレゴリー・ダコ氏は、FRBによる政策金利の予想中央値は12月時点と変わらず、0.25%ポイントの利下げが年内に2回あるという見通しになると予想。経済成長率見通しはわずかに下方修正、失業率見通しはわずかに上方修正され、年末のインフレ率見通しは2.5%で前回と変わらないとみている。

一方、今回のFOMCは政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を4.25―4.50%に据え置くと予想されている。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:ドローン大量投入に活路、ロシアの攻勢に耐

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 7
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中