ニュース速報
ビジネス

インタビュー:インドネシアLNG開発事業に生産能力超える引き合い=INPEX社長

2025年02月26日(水)19時03分

 2月26日、INPEXの上田隆之社長(写真)はロイターとのインタビューで、2030年代初頭の生産開始を目指すインドネシアのアバディ液化天然ガス(LNG)開発プロジェクトについて、供給能力を超える引き合いがあることを明らかにした。25日、都内のINPEX本社で撮影(2025年 ロイター/Kentaro Okasaka)

Kentaro Okasaka Yuka Obayashi

[東京 26日 ロイター] - INPEXの上田隆之社長はロイターとのインタビューで、2030年代初頭の生産開始を目指すインドネシアのアバディ液化天然ガス(LNG)開発プロジェクトについて、供給能力を超える引き合いがあることを明らかにした。拘束力はないものの、経済発展で需要が伸びるインドネシアや地理的に近い中国、台湾などアジアの買い手から購入の意向表明を受けたという。

上田氏は、ロシアのウクライナ侵攻でエネルギー安全保障の重要性が再確認される中、「信頼できて現実的な解は天然ガスだというのは、世界的な認識になっている」と指摘。INPEXも天然ガスの安定・長期供給を重視する一方、「できるだけクリーンなものにしていく努力はますます重要になってきている」とし、LNG生産と二酸化炭素の回収・貯留による排出削減(CCS)の組み合わせを「中心的な戦略に据えていく」と話した。

アバディガス田はインドネシア東部沖のマセラ鉱区にあり、65%の権益を保有するINPEXが操業主体として開発を主導。年間950万トン規模のLNGを生産・輸出する計画で、同社は基本設計と並行し、マーケティングや資金調達の交渉も進めて27年中の最終投資決定(FID)を目標としている。

上田氏は「ファイナンスのマーケットでも化石燃料に対する厳しい見方が少しずつ変わりつつある」と述べ、資金調達に楽観的な見方を示した。

INPEXは、18年に生産を開始し、年間約930万トンの生産能力を持つオーストラリア北部・イクシスLNGプロジェクトも30年代前半に第3トレインの操業開始を目指す。

中間ビジョンとして、35年までに事業規模を60%拡大する方針を掲げる同社は、アバディ、イクシスの両プロジェクトを「成長の柱」と位置づけている。

LNGを巡っては、トランプ米政権が輸出に積極姿勢を示している。上田氏は、ポートフォリオの多様化という観点から、米国LNGの調達について「関心を持っている」と述べ、コスト、供給時期、契約の柔軟性などを踏まえ、判断していく考えを示した。

石破茂首相がトランプ大統領との首脳会談で合意したアラスカ・天然ガス開発の協力に関してはコメントを控えた。ただ、すべてのプロジェクトにおいて、経済性の確保が大前提だと指摘した。

一方、人工知能(AI)の普及で電力需要が増す中、電力関連分野への進出にも意欲を示した。これまでの事業で培った地下掘削や洋上施設建設、CCSなど「INPEXならでは」の技術力を活用する形でプロジェクトに参加する例を示し、今年1月に北陸電力とエネルギーシステムの低炭素化で包括連携協定を結んだことに言及した。

財務戦略については、過去3年間で有利子負債の返済が進んだため、「会社のプライオリティーを返済中心から成長投資と株主還元に移していく」とした。今月公表した27年までの中期経営計画では、1株90円を起点として増額・維持する累進配当を実施し、総還元性向50%以上を目指す方針を掲げている。

      *インタビューは25日に実施しました。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、米国の台湾への武器売却を批判 「戦争の脅威加

ビジネス

11月ショッピングセンター売上高は前年比6.2%増

ビジネス

中国の海外ブランド携帯電話出荷台数、11月は128

ワールド

日経平均は小反発、クリスマスで薄商い 売買代金は今
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中