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緩和環境の継続、利上げ「一切ないわけではない」=田村日銀委員

2024年03月27日(水)16時21分

 3月27日、日銀の田村直樹審議委員は青森県金融経済懇談会後の記者会見で、緩和的な金融環境の継続は「利上げを一切しないということではない」と述べた。写真は日銀本店前で18日撮影(2024年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

Takahiko Wada

[青森市 27日 ロイター] - 日銀の田村直樹審議委員は27日、青森県金融経済懇談会後の記者会見で、緩和的な金融環境の継続は「利上げを一切しないということではない」と述べた。追加利上げの条件として、基調的な物価上昇率の上昇や物価上振れリスクの高まり、物価目標達成の確度がさらに高まってきた場合を挙げた。しかし、最終的にどこまで利上げするのか「確たることは言えない」と話し、「物価が過度に上振れて急激な金融引き締めが必要になるリスクは引き続き小さい」と述べるにとどめた。

田村委員は懇談会のあいさつで、現時点の経済・物価見通しを前提にすると、マイナス金利解除後も「当面、緩和的な金融環境が継続する」と話す一方、先行きゆっくりと、しかし着実に金融政策の正常化を進め、異例の大規模金融緩和を上手に手じまいしていくために「これからの金融政策の手綱さばきはきわめて重要だ」と語った。

田村委員は、追加利上げに「フォーミュラ(公式)があるわけではない」とし、「短期金利は、経済・物価・金融情勢を点検して物価目標の持続的・安定的な実現の観点から適切な水準に設定していくということに尽きる」と語った。利上げした場合は、利上げ後に経済・物価がどうなっていくか見ながら金融政策を運営していくと説明した。

「米国のように1年で5%利上げといったことになるとは考えていない」とする一方、どこまで金利を上げていくのか「確たることは現時点では言えない」と述べた。

実体経済にとって緩和的でも引き締め的でもない「中立金利」については「幅があり、一義的には決められない」と話した。

午前のあいさつで、金融政策正常化の最終的なゴールは金利が本来の機能を発揮できるような水準まで金利を引き上げていくことだと述べたが、会見では「金利機能の回復だけを目的として金利を引き上げることはない」と言明した。「経済が好循環で強くなっていく場合には、金利機能の働くような水準まで金融を正常化できることを期待している」と話した。

日銀の前回の利上げのピークは2007年の0.5%。今回の利上げ局面では0.5%を上回って利上げしていくのが望ましいかとの質問には「経済構造も大きく変わっている。どの程度上げたら金利機能が発揮できるのかというのも、2007年当時とは変わってきていると思う」と話し、実体経済をしっかり見ながら政策を運営していく考えを示した。

一方で、経済状況が悪化した場合には、現在日銀が進めている四半世紀にわたる金融緩和政策の「多角的レビュー」の分析も踏まえて、必要があればマイナス金利やイールドカーブ・コントロール(YCC)も含めて適切な金融政策運営を検討していくことになるとした。ただし、「政策の効果と副作用のバランスを慎重に見極めていくことが重要だ」と述べた。

<円安の影響「プラスマイナス一言では言えず」>

外為市場では日銀のマイナス金利解除後も円安が進行。27日の東京時間には、ドル/円が一時152円に迫り、1990年以来のドル高・円安水準となった。

田村委員は、為替相場の水準や評価について具体的にコメントすることは差し控えるとし、為替は「経済・金融のファンダメンタルズに沿って安定的に推移することが重要」と指摘した。

「為替は経済・物価に影響を及ぼす重要な要因の1つ」と話したが、円安傾向が「経済に与える影響は経済主体によってさまざまで、一言でプラスやマイナスと言えるような状況ではない」とも述べた。

(和田崇彦)

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