ニュース速報

ビジネス

アングル:米マンハッタンのオフィス市場、コロナ終息後も低迷

2023年07月16日(日)08時03分

7月12日、 新型コロナウイルスのパンデミックは終息したが、米ニューヨークの中心部マンハッタンのオフィス市場は低迷が続いている。マンハッタンの超高層ビルサミット・ワンバンダービルトで4月撮影(2023年 ロイター/Mike Segar)

[ニューヨーク 12日 ロイター] - 新型コロナウイルスのパンデミックは終息したが、米ニューヨークの中心部マンハッタンのオフィス市場は低迷が続いている。空室は常態化し、市内のオフィスビルの45%で、現在の価値が直近の売却価格を下回っているとの推計もある。

ロイターが収集した不動産仲介業者のデータによると、第2・四半期の賃貸面積は前年同期比で50%近く、パンデミック前の5年間平均からは25%減った。

賃貸料は下がらず、高級物件では跳ね上がってはいる。しかしオフィスビルの販売不振からは、オフィス市場が在宅勤務で激変し、投資が消極化している様子が読み取れる。

ネルソン・エコノミクスの不動産エコノミスト、アンドルー・ネルソン氏は、「現状ではオフィスビル市場は事実上、存在しないようなものだ。底値がどこか誰も分からないからだ」と話す。

高級物件の高額スペースに対する需要は旺盛だが、それ以外は全て「空室がどんどん増えている」という。「スローモーションで進む大惨事のようなもので、回復には何年もかかるだろう」

ジョーンズ・ラング・ラサール(JLL)のアンドルー・リム調査部長によると、過去の景気サイクルと異なり、オフィス市場は3年余りも低迷したのに、まだ調整が終わらない。不要なオフィススペースを市場から一掃して価格上昇に寄与してくれそうな、目ざとい投資家も様子見を続けているという。

JLLによると、第2・四半期にマンハッタンのビルでローンの残額が市場評価額を上回った物件の数は112棟、3340万平方フィートで、前期の73棟、1510万平方フィートから増加した。

ニューヨークでは過去数十年で最大の建設ブームとリノベーションによって潤沢な供給が維持され、賃貸物件を求めるテナントにとって有利な状況が続く。リノベーションのコストは1億ドルを超えることが珍しくない。

不動産仲介会社CBREグループによると、事務所スペース賃借需要の強さを示す「ネットアブソープション(実質賃貸契約面積)」は供給過剰を示すマイナスだ。マンハッタンでは足元、オフィス勤務がパンデミック前の水準を上回ったにもかかわらず、ネットアブソープションはマイナスの度合いが拡大している。

JLLのリポートによると、賃貸面積は昨年第2・四半期から46.7%減少し、四半期ベースでは2021年の第1・四半期以来の低水準となった。

しかし不動産大手サビルズによると、マンハッタンですぐに利用可能なオフィス面積は現在7030万平方フィートと過去最高だ。

ネルソン氏は、「住居への転用が話題に上っている。確かに部分的には可能だが、可能性が誇張されすぎている」と述べた。

家主は募集ベースの賃料を上げるため、コンセッション(1カ月間無料にしたり、各種の費用を負担するなどの特典)を増やしている。賃料自体はパンデミック期間中も安定していた。

テナントのオフィス修繕費用を賄うなどのコンセッションを計算に入れた実質有効賃料は、高級物件の場合、2020年の1平方フィート当たり53ドルが今年は同106ドルに倍増した。しかし老朽化した「Bクラス」のビルのオフィススペースの実質有効賃料はパンデミック期に48ドルから50ドルへと小幅な上昇にとどまり、高級物件とそれ以下の物件の間で需要の二極化が起きている。

(Herbert Lash記者)

ロイター
Copyright (C) 2023 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

インド、マルチ・スズキの要求受け小型車の燃費規制緩

ワールド

ブラジル中銀、2年後インフレ目標未達の予測 金利は

ビジネス

米配車大手リフト、自動運転タクシー導入に向け戦略会

ワールド

中国メディア記者が負傷、ウクライナの無人機攻撃で=
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 2
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉仕する」ポーズ...アルバム写真に「女性蔑視」批判
  • 3
    韓国が「養子輸出大国だった」という不都合すぎる事実...ただの迷子ですら勝手に海外の養子に
  • 4
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 5
    【クイズ】北大で国内初確認か...世界で最も危険な植…
  • 6
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 7
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
  • 8
    伊藤博文を暗殺した安重根が主人公の『ハルビン』は…
  • 9
    富裕層が「流出する国」、中国を抜いた1位は...「金…
  • 10
    単なる「スシ・ビール」を超えた...「賛否分かれる」…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 7
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 8
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中