ニュース速報

ビジネス

アングル:暗号資産投資に新潮流、人気増すネイティブトークン

2023年03月09日(木)16時01分

 3月7日、最先端のデジタル技術を舞台に活動する投資家にとっては、暗号資産(仮想通貨)の「総本家」とも言うべきビットコインはいささか古めかしい存在に映り始めている。2022年8月撮影(2023年 ロイター/Dado Ruvic)

[7日 ロイター] - 最先端のデジタル技術を舞台に活動する投資家にとっては、暗号資産(仮想通貨)の「総本家」とも言うべきビットコインはいささか古めかしい存在に映り始めている。

実際、一部の投資家はビットコインから、その高い成長力に魅せらる形で幾つかの別の暗号資産に乗り換えつつある。対象となっているのは、スマートコントラクト(売買契約を自動作成する仕組み)や分散型金融(DeFi)アプリを構築できるブロックチェーン・プラットフォームでそれぞれ使用される「ネイティブトークン」だ。

イーサやポルカドット、ソラナといったそれらのネイティブトークンの値動きに連動するマーケットベクターのスマートコントラクト・リーダーズ指数を見ると、今年に入ってからの上昇率は36%と、ビットコインの33%を上回っている。ソラナに至っては76%も上昇した。

暗号資産専門投資会社フィネキアのバンディープ・ランガー最高経営責任者(CEO)は、数ある暗号資産のうち最大のリターンが期待できるのは、DeFiアプリを支えるプラットフォーム上のスマートコントラクト型トークンだとの見方を示した。

ランガー氏は「これらは成長株のようなキャピタルゲインが見込める」と付け加えた。

コインシェアーズのデータによると、ビットコイン関連商品からは4週連続で資金が流出しているにもかかわらず、イーサとソラナに連動する投資商品は小幅に資金が入ってきており、投資家の間にもランガー氏の見立てに賛同する向きがいることが分かる。

時価総額トップ20の暗号資産の中には、イーサ、ポルカドット、ソラナ、カルダノなどのスマートコントラクト型トークンが入ってきている。

バンク・オブ・アメリカのアナリストチームも、スマートコントラクト型トークンとそれに対応するブロックチェーンベースのアプリを、株式市場におけるハイテク銘柄などの成長株になぞらえた。

2月24日付の調査ノートには「われわれは、今年がトークン間の価格がかい離する1年になると予想している」と記されている。

<なお大きい存在感>

ビットコインは長らくハイテク株と値動きが連動していたが、そうした関係は薄れつつある。スマートコントラクト型トークンが暗号資産分野の成長余地を次第に取り込み始めたことが原因だ。

ナスダック総合指数とビットコインの30日間の相関係数は2月23日に、昨年12月上旬以降で初めてマイナスに転じた。同係数はプラス1の場合、値動きの完全な連動を意味する。

ただ何人かの専門家は、世界的なマクロ経済の見通しや主要中央銀行の政策が、さまざまな暗号資産プロジェクトとそれらに対応するトークンの成長に影を落とす恐れもあるとくぎを刺した。

コインシェアーズの調査責任者ジェームズ・バターフィル氏は、暗号資産の間で値動きに大きな格差が生じると宣言するのは時期尚早だと警鐘を鳴らす。現にビットコインの存在感はなお大きく、年初時点で38%だった暗号資産市場の全時価総額に占める比率は足元で40%に拡大している。

一方でバターフィル氏は、値動きの大きな格差が現実になれば、それは暗号資産の世界が成熟している証拠かもしれないと述べた。

同氏は「暗号資産市場が進化し、より洗練されて成熟度が高まるのに伴って、われわれは価格のかい離が進むのを目にし始める、という考えを次第に受け入れていくべきだ」と主張している。

(Hannah Lang記者、Lisa Pauline Mattackal記者)

ロイター
Copyright (C) 2023 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日中双方と協力可能、バランス取る必要=米国務長官

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 6
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 7
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 8
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中