ニュース速報

ビジネス

雇用不足かインフレか、FRB当局者のリスク巡る見解に相違

2021年06月25日(金)09時31分

6月24日、米連邦準備理事会(FRB)の政策当局者らは、経済支援策の縮小開始時期やその方法を巡り議論を始めているものの、より大きなリスクとなるのは大幅な雇用不足なのか、それともインフレショックなのかについて見解が分かれていることが分かった。写真は2020年5月、ワシントンのFRB (2021年 ロイター/Kevin Lamarque)

[24日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)の政策当局者らは、経済支援策の縮小開始時期やその方法を巡り議論を始めているものの、より大きなリスクとなるのは大幅な雇用不足なのか、それともインフレショックなのかについて見解が分かれている。

ダラス地区連銀のカプラン総裁とセントルイス地区連銀のブラード総裁は24日、他の当局者の想定よりもインフレ高進が長期化する可能性があると警告。ブラード総裁は、秋に学校の対面授業が再開され、他国でも経済活動の再開が進むにつれ、インフレ率が予想を超えて上昇する「具体的なリスク」が存在しているとし、「政策担当者は今後、こうした新たなリスクを考慮する必要がある」と述べた。

両氏は米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバー18人のうち、FRBが来年にも利上げを開始すべきと考える7人に含まれている。

一方、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁とフィラデルフィア地区連銀のハーカー総裁、リッチモンド地区連銀のバーキン総裁は24日、労働市場の回復にはまだ時間がかかると強調した。

バーキン総裁は講演で、真の完全雇用はまだ「先だ」と述べ、秋に復職する国民が多くなる可能性が高いとの見方を示した。インフレについては、企業が供給を増やすことなどにより、第4・四半期に和らぐ公算が大きいと予想した。

ウィリアムズ総裁は、オンラインイベントで「経済がより完全に回復すれば、低金利政策を解除し、政策金利を正常な水準に戻すことができる。ただ、経済は完全雇用に程遠いため、まだその時期に達していない」と述べた。

パウエルFRB議長もこれまでに、インフレ高進は一過性との見方を繰り返し示し、大規模な雇用不足にも頻繁に言及している。

ハーカー総裁は24日、米国の雇用は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)前の傾向を維持していた場合と比較して約1060万人分少ないと指摘した。

インフレのほうが大きなリスクだとすれば、FRBの大規模緩和の縮小が遅れた場合、物価上昇のスパイラルが根付く恐れがあり、家計の購買力低下や経済成長の抑制につながりかねない。

一方、労働市場のほうが大きな問題であれば、性急な緩和縮小によって数百万人の国民が二度と復職できないリスクが生じる。

昨年のパンデミック初期の時点では、完全雇用と物価安定というFRBの2つの責務の間にほとんど葛藤はなかった。だが、現在は経済再開が加速し、企業が需要への対応に苦慮する中、5月の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年比5%と、2008年以来の高水準に達した。

物価高長期化の可能性を巡る一部当局者の懸念に加え、利上げが必要になる前に雇用の穴を埋めることができるかどうかを巡っても懐疑的な見方が出ている。

ダラス地区連銀のカプラン総裁は、パンデミック発生以降に退職した55歳以上の米国人は250万人超に上るとし、復職する人がどれだけいるかは不明と指摘。育児や介護などで仕事を辞めた人も150万人に達する中、雇用に「大きな穴」が生じているにもかかわらず、労働市場は5.8%の失業率が示すよりも逼迫している可能性があるとした。

同総裁はまた、需給の不均衡が予想以上に長期化する可能性があるため、来年2.4%か2.5%という自身のインフレ率予想には「上振れリスク」があると指摘。

その上で、後に急ブレーキを踏まなくても済むよう、緩和縮小のプロセスを緩やかに始めるため、FRBは月額1200億ドルの資産買い入れの減額に「割合早め」に着手すべきとした。

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン氏「今世紀の安保に歴史的意義」、最新兵器の

ワールド

新たな「エプスタイン文書」公開、ゴールドマンやHS

ワールド

USMCA「生産に不可欠」、自動車大手各社が米政権

ワールド

OPECプラス、26年第2四半期以降は増産か=HS
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    高市首相に注がれる冷たい視線...昔ながらのタカ派で…
  • 8
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    【HTV-X】7つのキーワードで知る、日本製新型宇宙ス…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中