ニュース速報

ビジネス

焦点:デモもコロナもまるで無視、米株の歴史的急騰に投資家困惑

2020年06月03日(水)14時24分

現在の米国株上昇は当初、弱気相場からの自律反発という形で始まったが、いつの間にか史上屈指の劇的な高騰へと姿を変えている。投資家は、過去の反発局面や、オプション市場やチャートの動きなどに目を向け、さらにどのぐらい株高が続くのかを探ろうと必死だ。写真は5月22日、ニューヨーク証券取引所で撮影(2020年 ロイター/Brendan McDermid)

Saqib Iqbal Ahmed Ira Iosebashvili

[2日 ロイター] - 現在の米国株上昇は当初、弱気相場からの自律反発という形で始まったが、いつの間にか史上屈指の劇的な高騰へと姿を変えている。投資家は、過去の反発局面や、オプション市場やチャートの動きなどに目を向け、さらにどのぐらい株高が続くのかを探ろうと必死だ。

S&P総合500種<.SPX>は3月終盤から6月1日の引け段階までに37%値上がりし、ナスダック総合<.IXIC>も過去最高値に接近。いずれも新型コロナウイルス感染のパンデミック(大流行)がもたらす幅広い経済の混乱や不確実性を、まるで無視するかのような勢いで上昇してきた。

こうした事態に投資家は困惑を隠せない。大方の予想を超えて進んできた相場の盛り返しにあえて逆らうポジションを構築する向きはほとんど見当たらないものの、株式市場は米連邦準備理事会(FRB)や米議会が無制限に支援してくれるとの期待を背景に、実態経済と切り離されてしまったのではないかと懸念する声が聞かれる。

例えばS&P総合500種の足元の株価収益率(PER)は21.2倍と2002年以降で最も高い一方、失業率は大恐慌以降の最悪水準にある。ロイター調査によると、5日に発表される5月米雇用統計では、非農業部門雇用の前月比減少幅が745万人と、4月の2050万人に続いて相当な大きさになると予想されている。

米国ではミネソタ州で起きた白人警官による黒人暴行死事件をきっかけとした人種差別や格差に対する抗議デモが全国に広がっているが、株式市場は今のところこれも深刻に受け止めていない。

ドイツ銀行のチーフ国際ストラテジスト、アラン・ラスキン氏は「われわれは従来とは違うゲームに参加しており、適正水準を決めようとする取り組みは困難になっている」と述べた。

歴史を見れば、株式市場と実体経済のかい離は長続きしそうにないことが分かる。バンク・オブ・アメリカ・グローバル・リサーチが90年間近くの相場動向を検証した結果に基づくと、S&P総合500種は景気後退期間に入ってから30%余り下落した後、半年弱経過してようやく底を打つというのが従来のパターンだ。

それが本当なら、S&P総合500種はこの先いずれ、3月23日につけた安値の2191.86を再びうかがい、6月1日終値から28%下落することになる。つまり最近の相場上昇に乗じて買いを膨らませている投資家にとっては、好ましくない事態が訪れかねない。

バンク・オブ・アメリカ・グローバル・リサーチの分析では、景気後退が長引くほど弱気相場の期間も延びる傾向があり、景気回復の兆しが乏しい中で過去最高値まで10%圏内に入ったS&P総合500種にとって、やはり幸先の悪い材料といえる。

政策担当者が市場を下支えするとの見方がバブルを醸成し、投資家はそれが最善ではないと承知しながらも株式の買いに動いているかもしれない、とバンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの株式デリバティブ調査グローバル責任者ベンジャミン・ボーラー氏は話した。

ボーラー氏は「自分たちの取引に確信が持てない市場参加者が多い以上、今までよりもっと荒っぽい調整局面を迎える素地が生まれている」と警戒する。

ソシエテ・ジェネラルが過去150年の弱気相場を調べたところでは、底値からの反発ペースはこれまでの方がずっと緩やかで、S&P総合500種が30%かそれ以上下落した後の3カ月間の平均上昇率は11%だった。反発期間が2年に及ぶと平均上昇率は40%に達するが、なんと3月終盤から足元までの値上がりがこれとほぼ同じなのだ。

ただ未曽有の規模の政策支援が後ろ盾にあることで、過去とは異なる相場の反応があってもおかしくないとの意見も少なくない。ロイターが5月終盤に市場ストラテジストとファンドマネジャー約50人に対して実施した調査では、年末のS&P総合500種は2950と、現在よりわずかに低い水準になるとの予想が示された。

チャート分析でも見通しは比較的明るい。ファイナンシャル・エンハンスメント・グループのポートフォリオマネジャー、アンドリュー・スラッシャー氏は、S&P総合500種はこれまでの上昇で、200日移動平均を突破しただけでなく、構成銘柄の9割強がそれぞれの200日移動平均を上回ったと説明し、大きな下落局面が終わる前に個々の銘柄の動きがこれほど強気な形状になるのは見たことがないと驚いている。

対照的にオプション市場は引き続き慎重姿勢に見える。S&P総合500種のオプションに織り込まれた今後3カ月で10%以上の幅で下落する確率は29%で、10%ないしそれよりも大きく上昇する確率の12%よりも高い。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は大幅続落、一時900円超安 AI株に利益

ビジネス

セブン&アイHD、3―11月期営業益3.1%増 通

ワールド

豪首相、ボンダイビーチ銃乱射で王立委設置へ 反ユダ

ビジネス

イオン、サンデーにTOB 1株1280円で完全子会
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 5
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじ…
  • 6
    マドゥロ拘束作戦で暗躍した偵察機「RQ-170」...米空…
  • 7
    日本も他人事じゃない? デジタル先進国デンマークが…
  • 8
    公開されたエプスタイン疑惑の写真に「元大統領」が…
  • 9
    衛星画像で見る「消し炭」の軍事施設...ベネズエラで…
  • 10
    「ショックすぎる...」眉毛サロンで「衝撃的な大失敗…
  • 1
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 5
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 6
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 10
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中