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米利下げ巡る判断は時期尚早、新型肺炎は緊密に注視=シカゴ連銀総裁

2020年02月28日(金)06時38分

米シカゴ地区連銀のエバンズ総裁は27日、FRBが今後の深刻な景気低迷に対抗する上で、「異例の緩和」と目標を上回るインフレ率を許容する姿勢が不可欠との見方を示した(2020年 ロイター/EDGARD GARRIDO)

[メキシコ市 27日 ロイター] - 米シカゴ地区連銀のエバンズ総裁は27日、新型コロナウイルスの感染拡大により米経済成長率見通しが下方修正され、連邦準備理事会(FRB)による利下げが必要になるのか判断するのは現時点では時期尚早との考えを示した。

エバンズ総裁は訪問先のメキシコ市で記者団に対し「より多くの情報を入手し、見通しがどのようなものになるか把握できるまで、金融政策措置について考えるのは時期尚早」と指摘。ただ「われわれは状況を緊密に注視しており、調整が必要と思われる事象があれば、あらゆる検討を行うと確信している」と述べた。

金融市場では、新型ウイルスの感染拡大の影響から米経済を守るためにFRBが早ければ来月の連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げを決定し、その後は7月末までにあと2回の利下げを実施するとの観測が台頭。

エバンズ総裁は米中の貿易取引量に影響が出ていることを示す経済指標はまだ見当たらないとし、融資も妥当な水準で推移していると指摘。「米国の金融政策は下方リスクに対応するに当たり、良い位置に付けている」と述べた。

その上で「昨年FRBが3回の利下げを実施した時は、新型ウイルスの感染拡大はレーダー上になかった。ただ、いかなる追加的なリスクに米国が直面していようとも、政策のポジションについては居心地良く思っている」と語った。

総裁はメキシコ中銀とグローバル相互依存センターが主催した中央銀行会議で、FRBが今後の深刻な景気低迷に対抗する上で、「異例の緩和」と目標を上回るインフレ率を許容する姿勢が不可欠との見方を表明。

政策金利がいわゆる「事実上の下限(ELB)」に直面したとき、「政策当局者は責務を果たすために異例の緩和措置を講じると確約しなければならない」と指摘。また低下傾向にあるインフレ率への対抗策として、FRBは「2つの責務の長期的な達成に向け、インフレ率が目標を上回って推移する期間が不可欠であることを一般に伝える」必要があるとした。

将来的なリセッション(景気後退)に対抗する際には、FRBは「適時適切な緩和策を提供するために、量的緩和やフォワードガイダンスなど非伝統的な政策を頼りにする用意が必要」と言及。一方で、FRBは政策判断に至る方法を一部調整する必要があるとした。

低インフレ率への対応を支援する方法として、目標レンジの導入を挙げたが、2%を上回るインフレ率を許容する非対称的な場合のみで、目標値を上回るのと同様に下回る場合も許容する2%前後の対称的なレンジは否定されるべきとした。

新型コロナウイルスの経済的影響に関しては、感染拡大の持続期間や当局に対応に応じて一時的となる可能性があるとした。

また、新型ウイルスが中国で抑制されているとの見方は過度に楽観的であり、FRBは状況を監視しているとした。

*内容を追加しました。

ロイター
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