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アングル:金融庁、新3局体制が始動 総合政策局が司令塔に

2018年07月17日(火)19時19分

 7月17日、金融庁では遠藤俊英氏が新長官に就任するとともに、総合政策局、企画市場局、監督局の新たな3局体制で業務を開始した。金融庁、2014年撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 17日 ロイター] - 金融庁は17日、遠藤俊英氏が新長官に就任するとともに、総合政策局、企画市場局、監督局の新たな3局体制で業務を開始した。同庁は、前身の金融監督庁発足から20年で初の大幅な機構改革を実施し、金融機関に対する検査と監督の一体運営を図り、検査局は廃止された。

新体制では、テーマ別の検査チームも所属する総合政策局が金融行政を主導することになりそうだ。

<機構改革の主眼>

今回の機構改革の主眼は、検査局の廃止と総合政策局の創設にある。

法令の形式的なチェックや重箱の隅をつつくような検査からの脱却を目指し、金融庁は森信親・前長官の時代から検査・監督の一体化を推進してきた。検査局と監督局の垣根を取り払うために、同じ業態の検査チームと監督局の担当課が同じフロアで仕事するなど体制も整えてきた。

新体制で、監督局には業態ごとの検査チームが移籍するものの、ある幹部は「監督局の業務はあまり変わらない」と冷静だ。

一方、金融界で動向が注目されているのが、旧総務企画局の一部とテーマ別の検査チームが合体して誕生した総合政策局だ。

旧体制では、旧総務企画局の業務を3人のトップが分担して所管していた。総務企画局の「企画」部門、すなわち、銀行法、金融商品取引法、資金決済法などの金融庁所管法令、上場企業の開示制度、会計制度、市場行政や外国為替証拠金取引の規制といった諸制度の立案や改正は、総務企画局長が束ねていた。

一方、「総務」部門、すなわち、人事、訴訟、税制などの部署を率い、金融庁を代表して国会や他省庁との連絡調整を担当していたのは総括審議官だった。さらに国際室も総務企画局の傘下で、事務次官クラスの金融国際審議官がトップを務めた。

今回の機構改革で、旧総務企画局長が担当していた企画部分は「企画市場局」に衣替え。総合政策局には人事、訴訟、税制、国会対応と国際室が入った。さらに総合政策局にはフィンテック、外債運用、マネーロンダリング防止対策など横断的なテーマで行う検査チームも加わった。

17日施行の改正金融庁組織令では、総括審議官の職務について、金融庁に関する重要案件の調整役という位置づけは変わらなかったが、幹部によると、総合政策局長や同局長のもとで調整役となる総括審議官の職務権限は、従来の総括審議官より広いものになる可能性がある。

<注目される佐々木局長の総括審議官時代>

新たに発足した総合政策局の役割を「先取り」してきたのが、今回、同局長に就いた佐々木清隆氏の総括審議官時代の取り組みだ。

佐々木氏は証券取引等監視委員会の事務局長を経て2017年7月、総括審議官に就任。森前長官のもと、金融庁の機構改革や国会対応という従来の総括審議官の役割に加え、仮想通貨交換業に対する立ち入り検査や、金融機関のマネロン対策の監視などを指揮した。

コインチェックの仮想通貨流出事件後、仮想通貨交換業者への矢継ぎ早の立ち入り検査と、その後の行政処分の連発は、まさに佐々木総括審議官の陣頭指揮の成果でもある。

新たな体制で、総合政策局は金融行政の司令塔に改めて位置づけられた。個別のテーマで金融界のリスクを横断的に分析し、分析の結果、特定の業態で問題が見つかれば、監督局と連携してその分野の金融機関に立ち入り検査を行い、課題解決を促す。今後は、そうした取り組みが活発化しそうだ。

人事異動が発令された17日、庁内では辞令を手にした職員が各階を行き交った。ある幹部は「金融の世界は、いつリスクが顕在化するかわからない。組織再編を理由に職務を中断するわけにはいかない」と気を引き締めていた。

(和田崇彦 編集:田巻一彦)

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