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利益還元、競争で実現可能=地銀再編で前公取委事務総長

2017年11月24日(金)18時55分

 11月24日、公正取引委員会の中島秀夫・前事務総長は、ロイターの単独インタビューに応じ、地方銀行の再編に関連し、利用者への利益還元は「競争によって初めて確保できると思う」と指摘。写真は金融庁の入るビル、都内で2014年8月撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 24日 ロイター] - 公正取引委員会の中島秀夫・前事務総長は24日、ロイターの単独インタビューに応じ、地方銀行の再編に関連し、利用者への利益還元は「競争によって初めて確保できると思う」と指摘。統合によるコスト削減の効果は持続しないとの見方を示した。

一方、企業合併では、統合後のシェアが100%のケースでも公取委が承認した例があり、統合後のシェアは審査の1つの基準に過ぎないとした。

人口減少や超低金利で地銀の収益環境は厳しさを増している。金融庁はリポートで、地銀の過半数が貸出や手数料ビジネスといった本業で赤字になったと指摘した。

しかし、地域の有力行同士の統合計画は、公取委の承認が出ず、統合延期が続出。ふくおかフィナンシャルグループ<8354.T>と長崎県の十八銀行<8396.T>は7月、統合の無期延期を発表。新潟県の第四銀行<8324.T>と北越銀行<8325.T>は10月、統合を2018年4月から同年10月に先送りした。中島氏は、個別の案件にはコメントしなかった。

健全性に問題のある地銀が他行との統合を計画した場合、公取委の審査が長引いている間に金融システム不安に発展するリスクがあるが、中島氏は「経営の健全性が重要なことは理解しているが、経営の健全性を確保するための対応として競争圧力がなくなってしまうような企業結合しかないのかどうか」と疑問を呈した。

「システミックリスクを避けるためには独占するしかないというのは、議論が飛躍しているのではないか。また、独占することよって、本当にシステミックリスクや、低金利や人口減少等の経営環境を取り巻く状況が改善される方向に向かうのか」とも述べた。

一方、中島氏は、シェアが大きくなることだけが、公取委の審査基準ではないとも指摘。100%のシェアであっても競争圧力が認められる場合もあれば、50%のシェアでも競争圧力に問題があるとされることもあるとの見解を示した。

中島氏は7月に公取委の事務総長を退任し、現在は米大手法律事務所ホワイト&ケースの東京オフィスの顧問を務めている。

全国地方銀行協会は「将来にわたって地域の金融仲介機能が維持されることの重要性を十分に踏まえ、最善の結論が得られることを願っている」とコメント。中島氏の発言については言及を控えた。

(和田崇彦 編集:石田仁志)

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