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日産、無資格検査で今期中に検査員85人補充 ゴーン氏の責任否定

2017年11月17日(金)22時23分

 11月17日、日産自動車は、無資格者が新車出荷前に安全性などを最終確認する完成検査を行っていた問題で、第三者の弁護士らを交えた調査報告と再発防止策を発表した。国土交通省に報告書を提出する西川社長。都内で撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai)

[横浜市 17日 ロイター] - 日産自動車<7201.T>は17日、無資格者が新車出荷前の安全性などを最終確認する完成検査を行っていた問題で、第三者の弁護士らを交えた調査報告と詳細な原因分析、再発防止策を国土交通省に提出した。資格者を指す完成検査員(以下、検査員)の不足、完成検査制度に対する管理者層の規範意識の薄さ、現場と管理者層との距離――などが問題の原因と結論づけた。

会見した西川廣人社長は、問題の行為は「係長以下で常態化」しており、工場の課長以上の管理職はまったく把握していなかったと明らかにした。自身の月額報酬の一部を10月から自主返納しているといい、来年3月まで返納を続ける意向を示したが、返納額の公表は控えた。進退については「私の責任はこの状態から挽回し、信頼を回復して事業を正常化させることに尽きる」と繰り返した。

無資格者による完成検査は車を組み立てる国内の全6工場で行われていたが、調査の結果、その多くの工場で1990年代には常態化していたとみられ、栃木工場では38年前の1979年から行われていた可能性があることも判明した。ただ、西川社長は「過去からの責任を問うのは非常に難しい」として「私が責任を持って改善を進める」とした。

会見には経営トップを長年務めたカルロス・ゴーン会長の姿はなく、人員削減などを断行してきた同会長の経営も一因ではないかとの質問も出た。

西川社長は、完成検査工程に適切な「人員を配置していなかった」として特定工程の人員不足は認め、自らに原因はあるとしたが、同会長の経営は「直接的な原因ではない」と否定。会見に同席した山内康裕チーフ・コンペティティブ・オフィサー(CCO)も「工場全体では人員不足にはなっていない」と強調し、同会長に責任はないとの見解を示した。

再発防止策の一環として、今年度中に検査員107人を新たに育て、退職者を考慮し、85人の純増を計画する。また、現在の検査員536人のうち57人が期間従業員のため、今年末までに期間従業員の正規従業員化を促し、離職による減員リスクを避ける。

山内CCOは、現在は京都を除く5工場の生産ライン速度を通常の「4割から8割まで」落としており、5工場で生産される輸出向け車両にも「影響は少しある」と話した。京都工場は今までと同じペースという。工場によって異なるが、検査員の習熟度向上や増員を図り、「年末から今年度いっぱい」で通常速度に戻す方針を示した。

工場の管理と運営を本社で可視化するため、本社生産部門に日本の工場全体を統括する常務執行役員を新たに配置する。同常務には、ジャトコに出向中で同社最高執行責任者を務める本田聖二氏が12月1日付で就任する。

*内容を追加しました。

(白木真紀)

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