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焦点:「リフレトレード」早くも息切れ、米景気減速が主因

2017年04月24日(月)16時17分

 4月19日、世界の金融市場では、株と債券利回り、ドルが下落、債券の利回り曲線がフラット化し、ポンドは上昇。「リフレ取引」が早くも腰折れしつつある。写真はロンドンで撮影(2017年 ロイター/Hannah McKay)

[ロンドン 19日 ロイター] - 世界の金融市場では今、株と債券利回り、ドルが下落、債券の利回り曲線がフラット化し、ポンドは上昇している。昨年始まったばかりの「リフレ取引」が早くも腰折れしつつある。

問題は、年末まで現在の状態が続くのか、それとも年後半になれば昨年の基調が蘇るのかどうかだ。

はっきりしているのは、年初に抱かれていた自信が失われたことだ。ゴールドマン・サックスは18日、長期間維持していたドルの強気見通しを撤回。ドイツ銀行は同日、メイ英首相が下院の前倒し総選挙を求めたのをきっかけにポンドの弱気見通しを取り下げた。

英国の欧州連合(EU)離脱決定と米大統領選でのトランプ大統領勝利という昨年の2大激震イベントを受け、一時は世界中の投資家がリフレ取引に備えていた。トランプ大統領は減税や金融規制の緩和、大型の財政支出を次々と打ち出すと期待されていた。

実際にポンドは急落し、米連邦準備理事会(FRB)は2度利上げを実施し、ドルは14年ぶりの高値を、米国株は過去最高値をそれぞれ更新。世界中で国債の利回り曲線がスティープ化して銀行と金融株の追い風となった。

それが今揺らいでいるのは、米国経済の明らかな減速と、世界的なインフレ鎮静化の兆しに主因がある。利回り曲線がフラット化、つまり長短金利差が縮小に転じたことは、経済の不透明感を映し出している。

バリアント・パーセプション・リサーチの共同創設者、ジョナサン・テッパー氏は「(利回り曲線のフラット化は)トランプ大統領のリフレ・シナリオに反する。サーベイ指標の中には数年ぶりの高水準を付けたものもあるが、実際の経済統計はぱっとしない」と話す。

モルガン・スタンレーが算出する指数によると、予想物価上昇率も天井を打ったようだ。

ドルは年初から2.5%、米銀行株は2月の高値から10%、それぞれ下落した。ポンドは昨年6月の英国民投票時に比べて13%下落しているが、一時の20%安からは持ち直している。

<利回り曲線>

第1・四半期の米経済成長率の予想は、ここ数週間で下方修正されている。米アトランタ地区連銀の経済予測モデル「GDPナウ」によると、成長率は年率0.5%程度と、わずか2カ月弱前の2.5%前後から大幅に下がっている。

米議会共和党が医療保険制度改革(オバマケア)代替法案を撤回したことを受け、ムニューシン米財務長官は税制改革の日程が想定より遅れるとの見通しを示した。

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ(BAML)がファンドマネジャーを対象に実施している調査によると、主要な市場で大規模なポジション調整が起こっているようだ。米国株への投資配分が2008年1月以来の低さとなった一方、世界の銀行株への投資配分は過去最高に達している。

BAMLの首席投資ストラテジスト、マイケル・ハートネット氏は「投資家は大挙して米国株から引き揚げている。大半の投資家は、米国株が割高で、税制改革が遅れるリスクがあると考えている」と述べた。

米国株の中で最も下げがきついのは銀行株だ。銀行株は米大統領選以降の3カ月間で30%以上も上昇したが、その後は下落に転じ、今では年初の水準を下回っている。

BAMLの調査では銀行株への投資配分が極端に高いため、今後も下落余地はありそうだ。利回り曲線がフラット化すると、低利の短期資金を借りて高い金利で長期貸し出しを行うことで利ざやを稼ぐ銀行には不利となる。

期間2年と10年の米国債利回りの格差は18日、昨年11月以来で最も低い100ベーシスポイント(bp)まで縮小し、12月の135bpには遠く及ばなくなった。しかも12月以来、FRBは合計50bpの利上げを行っている。

(Jamie McGeever記者)

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