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インタビュー:投資への資金、物価1%半ばで顕著に=野村CEO

12月29日、野村ホールディングスの永井浩二グループCEO(最高経営責任者)は、2017年の日本経済のデフレからの脱却に前向きな見通しを示した。写真は2月撮影(2016年 ロイター/Yuya Shino)
[東京 29日 ロイター] - 野村ホールディングス<8604.T>の永井浩二グループCEO(最高経営責任者)は、2017年の日本経済のデフレからの脱却に前向きな見通しを示した。物価の上昇率が1%台半ば程度に回復すれば、日本の個人金融資産は投資商品に流れるようになると期待を示した。ロイターとのインタビューで述べた。
野村は11月末の機関投資家向けの説明で、「資産形成層」への取り組みを経営上の重点課題の1つに盛り込んだ。顧客層の多くが高齢者である同社にとっては、若い世代へのアクセスを手厚くする必要があるためだ。
永井グループCEOは、若年層への接点を強化する戦略として、オンライン証券会社の買収や自前でのオンラインサービスを強化など、あらゆる選択肢を排除せず検討していると話した。
インタビューの主な内容は以下の通り。
──日本経済の展望、デフレ脱却の見通しは。
「原油(価格)はひとまず、減産合意を受け下げ止まったようだ。来年、以前のようなモメンタムに戻れるかが重要になる。デフレ脱却は(達成)できるのではないか。アベノミクスは失敗しデフレ脱却はないとなれば、投資家説明会を開き、2020年3月期に向けた(業績の数値)目標を変えると伝える」
──貯蓄から資産形成への流れは。
「(人々が)デフレが続くと思うか、止まると思うかにかかっている。ただ、雪崩を打ったように(お金の流れは)は起きない。税制(優遇の措置)も含め、ジュニアNISAや積立型NISAなどの仕組みができてきている。力を入れていく」
「来年ある程度、原油価格が戻り、長く続いたデフレが終わるのだと人々が思い、(物価の上昇が)黒田日銀総裁の言う2%にはならなくても、1%台の真ん中くらいまでの上昇率がある程度でてくれば、お金は(投資商品に)流れると思う」
──野村の海外部門の利益目標も達成できそうだ。その他のグループの課題は。
「投資家が購入した当社金融商品の額(総募集買付額)を月間1兆円に増やそうと言ってきたが、この約半年間は相場環境や株式の売出しなどセカンダリーのマーケットに振り回され、目標を達成しなかったことがある。また、国策として長期累積投資を促進する方針を示しているので、(これから投資をしようとする)マスアフルエント層への取り組みに力を入れるのが2つ目の課題だ」
──若年層の取り込みにネット証券は重要なツールだが、買収は検討しないのか。
「軽くてコストの安いところをどこかが売ってくれるのなら、あらゆる選択肢は排除しない。残念ながら具体的な話は全くない。自前がいいか買うのがいいか、いろいろと考えている」
──米国では来年トランプ政権がスタートする。影響は。
「就任してからどのような政策を出してくるかが読めない。マーケットはビジネスにフレンドリーな政策になるだろうと期待している。ただ、通商政策や安全保障政策の2つは見えない。TPP(環太平洋連携協定)はやめると宣言するのだろう、NAFTA(北米自由貿易協定)はどうするのだろうなど、いろいろ(見えない点が)ある。米国が保護貿易的な政策をとると、世界経済にとってはあまりいい影響はないだろう」
──ブレグジット後の野村のロンドンの業務については。
「あらゆるシナリオを想定し、頭の体操をしている。まだ(詳細が)分からない。(来年は)欧州で選挙も重なる。(ロンドンから)動いてしまうと費用がかかるので、タイミングを計るしかない」
*インタビューは12月21日に行われました。本文中の脱字を補いました。
(江本恵美、トム・ウィルソン 編集:田中志保)