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ECB金融緩和急がず、英EU離脱決定後の市場大混乱無く=関係筋

2016年06月30日(木)03時19分

 6月29日、ECBが金融緩和を急いでいないことが関係筋の話で分かった。写真はドラギ総裁。ブリュッセルで9日撮影(2016年 ロイター/Francois Lenoir)

[フランクフルト 29日 ロイター] - 英国が欧州連合(EU)離脱を決めた後、恐れていたほど市場は混乱しなかったことから、欧州中央銀行(ECB)が金融緩和を急いではいないことが複数の関係筋の話で分かった。

英国のEU離脱(ブレグジット)をめぐる投票結果を受け、ユーロ圏の銀行株は値下がりしており、ユーロ圏経済の重しとなる見込みだ。ECBのドラギ総裁も28日のEU首脳会議の場でこの点を指摘している。投票結果は、EUの将来に対する根源的な疑問も投げかけている。

ただ、ECBの事情に詳しい12人程度の当局者によると、ECBは今週に入って相場が持ち直したことにいくぶん安心しており、ブレグジットの実際の影響が定まらない中、様子見姿勢をとることが好ましいと考えているという。ECBが今回、緊急時に英国の銀行に対しユーロを提供する通貨スワップ枠を活用していないとし、英ポンドや一部の株は大幅に売られたものの、2008年の金融危機時とは対照的に、金融市場は円滑に機能している、と話す。

この当局者らは、インフレ見通しが悪化した場合、ECBがさらなる景気刺激策を導入する方針だと説明。ただ、英国民投票の動向は政治的な問題であり、中央銀行よりもむしろEU各国政府・機関が解決するべきものだと強調した。

投票結果が投資家や消費者に与える影響を見極めるには時期尚早であり、ECBは9月にまとめる最新のスタッフ経済見通しをみてからの方が政策を決めやすいという。

こうした発言から考えると、7月21日に開かれるECB理事会まで今の市場の安定が続くなら、ECBの対応は、「必要な場合にはさらなる手段を講じる」と言及することにとどまりそうだ。

当局者の一人は「市場はユーロ圏と英国の成長見通しが低下したことを織り込んでいる。今の評価はかなり現実的で、著しい過剰反応はないだろう」と述べる。

ただ、ECBのこうした考え方は市場の見方とは異なる可能性がある。相場が持ち直した要因の一部には、ECBや英中銀イングランド銀行(BOE)がさらなる景気刺激策を導入するとの期待があるからだ。

ECBは物価を押し上げるために昨年12月以来、2回利下げしているほか、既にユーロ圏の国債を中心とした月額800億ユーロ(887億1000万ドル)相当の資産を買い入れている。

当局者らは、ECBがさらなる緩和手段を講じることは理論上は可能であるものの、これは単なる応急措置でしかなく、欧州の政治的な結束や経済戦略をめぐる国民や投資家の根本的な懸念の解決には役立たないと指摘。ユーロ圏の銀行は、貸し出しの際の金利が低いことや、ECBに預け入れた資金に手数料がかかっていることが利ざやを圧迫しているとしており、さらなる利下げは銀行の抱える問題を悪化させるかもしれないとの懸念も示した。

ロイター
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