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米GDP第1四半期1.1%増に上方修正、個人消費は弱含む

2016年06月29日(水)02時25分

 6月28日、第1・四半期の米GDP確報値が1.1%増に上方修正された。写真はニューオーリンズ港で2010年6月撮影(2016年 ロイター/Sean Gardner)

[ワシントン 28日 ロイター] - 米商務省が28日発表した第1・四半期の国内総生産(GDP)確報値は、年率換算で前期比1.1%増と、改定値の0.8%増から上方修正された。市場予想は1.0%増だった。ソフトウェアなどの企業投資や、輸出が上方修正された一方、個人消費は引き下げられた。

第1・四半期のGDPは4月に発表された速報値と比べ0.6ポイントの引き上げになる。

昨年第4・四半期のGDPは1.4%増だった。

小売売上高や中古住宅販売は4月、5月と増加した。企業投資は引き続き低迷し、新規就業者数の伸びは鈍化したものの、第2・四半期には経済活動が持ち直した兆しがみられる。ただ英国が欧州連合(EU)離脱を決めたことによる先行き不透明感は今年の経済活動のリスクとなる。

ムーディーズ・アナリティクスのシニア・エコノミスト、ライアン・スィート氏は「金融市場の混乱が消費動向に影響し、企業の支出を圧迫するかどうかを見極めるため、今後数カ月での動きが注目される」とし、「金融市場が安定すれば、英国のEU離脱(ブレグジット)決定による米国への影響は極めて限定的なものにとどまるだろう」と語った。

オックスフォード・エコノミクスの米マクロ経済主任、グレゴリー・デイコ氏も「ブレグジット決定を受けて米ドル高、金融市場の緊張の増大が米経済活動を圧迫することを見込んでいたが、低金利の効果に相殺されて、最終的な影響は軽微になる」との考えを示した。

米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は先週の議会証言で、経済指標は第2・四半期のGDPの伸びが「顕著に加速した」ことを示すと述べた。アトランタ連銀が公表している第2・四半期のGDP予測は現段階で年率2.6%増となっている。

所得面から経済活動を把握する国内総所得(GDI)は第1・四半期に2.9%増加した。企業利益の上方修正を反映し、改定値の2.2%増から引き上げられた。

米経済成長をみる代替手法であるGDPとGDIの平均は2.0%増と、従来の1.5%増から上昇修正された。

第1・四半期は、ドル高や世界的な需要の低迷が経済成長を妨げた。さらに、企業が積み上がった在庫の解消に動いたことで生産が抑制されたほか、原油安の影響で機器などの資本財に対する投資が大幅に削減され、さらなる重しとなった。

エコノミストらは、季節変動を調整するモデルにゆがみがあり、十分に機能していないと指摘。ここ6年間のうちの5年は、第1・四半期のGDPが他の四半期を下回っている。

米政府は季節調整のやり方に問題があることを認めており、2018年半ばから、GDPと主要な内訳項目について季節調整前の数字を算出し、季節調整済みの数字と一緒に発表する予定。

第1・四半期の企業投資の内訳をみると、ソフトウェアと研究開発(R&D)が4.4%増と、改定値の0.1%減からプラスへ引き上げられた。機器投資は8.7%減と、改定値の9.0%減から上方修正された。

企業投資全体のGDPへの寄与度はマイナス0.58ポイント。改定値はマイナス0.81ポイントだった。

輸出は0.3%増と、改定値の2.0%減からプラスへ上方修正された。その一方、輸入は抑制されており、貿易赤字が減り、外需のGDPに対する寄与度は0.12ポイントとプラスに転じた。改定値ではマイナス0.21ポイントだった。

GDPの3分の2以上を占める個人消費支出は1.5%増と、改定値の1.9%増から下方修正され、2年ぶりの小さな伸びにとどまった。交通機関や娯楽などのサービス消費が弱かったことを反映した。

ただ所得や貯蓄は増えており、個人消費は今後加速する可能性がある。貯蓄は7967億ドルと、改定値の7826億ドルから上方修正された。

在庫投資は683億ドルと、改定値の696億ドルからやや下方修正された。

税引き後の企業利益は2.2%増と、改定値の0.6%増から上方修正された。企業利益は昨年第4・四半期に8.4%急減した。英BPが、2010年にメキシコ湾で起きた原油流出事故の賠償で208億ドルを支払ったことが一因だった。

GDP発表後、金融市場にはほとんど動きはみられなかった。投資家らは英国のEU離脱(ブレグジット)の影響を見極めようとしている。

ロイター
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