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焦点:米国の年末商戦、値引き求める消費者との厳しい闘いに

2015年10月06日(火)17時29分

 10月5日、米小売り各社は年末商戦シーズン入りを前に、値下げ抑制姿勢を打ち出しているが、業者間の競争が激しい上、消費者は値引きに慣れ、景気も回復途上にあるため、厳しい闘いを強いられそうだ。写真は2014年11月、米デンバーで割引クーポン券を切り取る従業員(2015年 ロイター/Rick Wilking)

[ニューヨーク 5日 ロイター] - 米小売り各社は年末商戦シーズン入りを前に、今年は収益を大きく損なうような値下げを抑制する姿勢を打ち出している。しかし業者間の競争が激しい上、消費者は値引きに慣れ、景気もまだ回復途上にあるため、厳しい闘いを強いられそうだ。

米小売業者にとって年末商戦シーズンは非常に重要で、中には1年の利益の約3分の1を11、12月の2カ月間で稼ぐ業者もあるほどだ。ここで勝敗を分けるのが値引き動向になる。

市場調査会社NPDの調査によると、今年の年末商戦の売上高は、前年比伸び率が2009年以来で最低水準にとどまる見通し。またプライスウォーターハウスクーパース(PwC)によると、消費者はますます値引きを求めるようになっている。いずれのデータもロイターが単独で入手した。

米ティーン向けアパレル大手アバクロンビー・アンド・フィッチやエアロポステールは、定価で売り出す商品数の拡大に集中し、割引は最小限にとどめる方針を示している。昨年は、ロゴを強調した商品の人気が急低下し、こうした商品を売りさばくために大幅な値引きを行ったが、今年はボヘミアン・スタイルや花柄デザインの商品が定価でよく売れそうだという。

複数の専門家によると、商品やサービスに強い個性があったり、カスタマイズが可能であるなど差別化を図れる小売業者の方が、何でもかんでも値引きする業者よりも利ざやを拡大するチャンスはありそうだ。

PWCは、アップルの「iPhone(アイフォーン)」や高画質テレビといった選りすぐりの電子機器や、健康・運動関連商品が今年は好調だと予想している。

しかし消費者側は長年、5割以上の値引きに慣れきっており、小売業者はこうしたマインドと闘う必要がある。PwCのデータによると、消費者の87%は、今シーズンの買い物で価格が一番の判断材料になると答えており、この比率は前年より3%高い。

同社によると、景気は昨年に比べて回復しているが、賃金の伸びが弱い上、医療や教育費が上がり、全般的な支出は圧迫されている。

同社の米小売り・消費チームを率いるスティーブン・バー氏は「景気回復の足取りが弱く、定まらないため、小売業者は大幅な値引きをしない戦略で今シーズンに臨むとしても、ちょっとしたことで値引きを始めてしまうだろう」と語った。

NPDの首席産業アナリスト、マーシャル・コーエン氏は、11月から1月半ばまでの売上高(生鮮食品と自動車を除く)は前年比2.8─3.2%増となり、昨年の3.5%増から鈍化すると予想している。予想の下限になれば、2009年以来、6年ぶりの低い伸びだ。

コンサルタント会社、アリックスパートナーズも、今シーズンの伸びが2.8─3.4%で、昨年の4.4%から鈍化すると予想。予想の下限だと、やはり09年以来の低い伸びになる。

同社の小売慣行担当ディレクター、ノーム・パランスキー氏は、消費者は昨年以来のガソリン価格下落で約1000億ドルを節約できたと

した上で、中低所得者層はその分を貯蓄に回したり、旅行や娯楽に費やしていると説明した。

アナリストによると、高所得者の方は保有している株価が乱高下したため消費を控えているほか、米連邦準備理事会(FRB)が利上げを先送りしているのは景気が不透明だからではないかと心配している。

<早くも販促開始>

数人のアナリストによると、今年は既にクリスマスの飾りつけやクリスマス向けサービスの提供が一部で始まっている。大幅な値引きが始まる前に消費者を呼び込もうとという目算だ。

小売り大手ウォルマート・ストアーズは昨年より2週間早く、クリスマス休暇向けの予約販売を開始した。

全米小売連盟のキャシー・グラニス・アレン氏らによると、薬局チェーンのCVSファーマシーでは最近、年末商戦用の商品が陳列されていたのが目撃された。「景気が良ければ、この種の販売促進活動がこれほど早い時期に始まることはない」という。

(Kylie Gumpert and Siddharth Cavale記者)

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