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米雇用統計9月利上げへ決定打欠く、今後の市場動向が左右

2015年09月05日(土)05時34分

9月4日、8月の米雇用統計は強弱まちまちの内容となり、FRBが9月利上げの是非を判断する決定打を欠いた。今後数週間の金融市場のボラティリティーが、利上げの行方を左右する可能性がある。写真は2012年8月、ワシントンのFRB(2015年 ロイター/Larry Downing)

[ニューヨーク/リッチモンド(米バージニア州) 4日 ロイター] - 8月の米雇用統計は強弱まちまちの内容となり、連邦準備理事会(FRB)が9月利上げの是非を判断する決定打を欠いた。そのため今後数週間の金融市場のボラティリティーが、利上げの行方を左右する可能性がある。

雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比17万3000人増と、予想の22万人増を下回った。だが6月と7月は当初発表から合わせて4万4000人の上方修正となり、賃金の伸びも予想を上回った。失業率は7年半ぶりの水準となる5.1%に低下した。

金融市場が過去2週間に大きく混乱する中、今回の雇用統計はおそらく、FRBが判断材料として16━17日の連邦公開市場委員会(FOMC)前に入手できる最善、かつ最後の直接的な指標となる。だが不透明感は払しょくされないままだ。

アリアンツの首席経済アドバイザー、モハメド・エラリアン氏は「9月利上げの決定にあたり、FRBは視界不良で窮地に追い込まれた」とし、「会合まで、FRBは国際金融市場の動向に一段と神経を尖らせるだろう」と話す。

ただFRBは、雇用はそれほど懸念していないが、中国不安による商品(コモディティ)や世界経済への下押し圧力で、インフレが早期に加速しない可能性を懸念している。

リッチモンド地区連銀のラッカー総裁は雇用統計について「良い内容」とし、金融政策見通しを変えることはないと述べた。

一方で、雇用の伸びが予想を5万人近く下回った点に注目する向きもある。だが過去3カ月の平均は22万1000人増と、労働市場の回復を維持するのに十分な水準にみえる。

また8月の雇用統計は、その後の改定で上方修正される傾向がある。

先物相場では、9月の利上げ予想確率は約20%と、統計発表直前の30%から低下。金融市場が動揺する以前は50%超の確率を織り込んでいた。

ジェフリーズの短期金融市場エコノミスト、トーマス・シモンズ氏は「FRBに利上げを思いとどまらせているのはインフレだ。その点において、雇用統計はFRBに何ら証拠を提供しなかった」と指摘。

その上で「FRBが9月に利上げ開始を決定するかどうかは、会合までに商品市場がどう反応するかにかかっている」とし、「商品市場が安定すれば、(利上げの)可能性はある」と話した。

ロイター
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