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野村、海外利益目標を据え置き 投資銀は米州拡充で収益増へ

2015年05月28日(木)16時45分

 5月28日、野村ホールディングス欧米アジアの海外部門の収益を2016年3月期に税引き前利益500億円を計上する目標を据え置いた。都内で先月撮影(2015年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 28日 ロイター] - 野村ホールディングス<8604.T>は28日開催した説明会で、欧米アジアの海外部門の収益を2016年3月期に税引き前利益500億円を計上する目標を据え置いた。同社の海外部門は前年まで赤字が続いており、この展望についての会社側の認識に注目が集まっていた。

また、投資銀行部門では、今後2─3年で収益を20億ドルに伸ばす目標で、国内外の割合を半々に持って行く計画を示した。主に、投資銀行ビジネスのフィープールが世界最大の米州でカバー体制の強化や人員増強を進め、グループ全体への収益貢献を拡大する考え。

説明会で野村のホールセール部門CEOの尾崎哲氏は、昨年のムーディーズによる格上げにより、生命保険会社や中央銀行といった顧客との取引が増え、「足元では格上げ効果が思ったより速いペースで上がっている」とコメントした。

部門の生産性の向上のほか、フィープールを現行から50ベーシス拡大するなどで、海外の税引き前利益500億円と、海外を含むホールセール部門の税引き前利益1250億円という目標達成を「確実なものにする」と話した。

15年3月期、野村の海外部門は「過去の取引に関する係争事案の引当金」を計上したため164億円の赤字。引当金がなければ黒字だったが、一部アナリストは今年度に目標達成は難しいとの見方を示している。

<IBの収益、半分は海外から>

ホールセール部門の一角である投資銀行(IB)業務では、部門のグロス収益を現行の1940億円から20億ドル(2480億円)に引き上げる計画を示した。

現在は国内からの収益の方が海外より大きいが、IBのグローバルヘッド、奥田健太郎氏は、海外の収益拡大で国内外の比率を1対1にする方針を明らかにした。「順調にいけば2─3年で達成できる目標だが、何とか前倒しで達成したい」と(奥田氏)という。

野村のIBのプラットフォームは欧州が大きいが、今後、米州でもカバレッジや顧客との関係強化で、ビジネスを拡充する方針。

IBのカバレッジはこれまでに、金融、小売、ヘルスケア、資源などを重点セクターと据えてきたが、最近では不動産やゲーミング担当の人員を増やし、M&Aのアドバイザリービジネスやレバレッジファイナンスを強化している。

奥田氏は、こうした体制強化により、野村の米州の業務の「ステージが変わってきている」とコメント。今後は、現地でオリジネート(開拓・組成)する案件をさらに増やし、グローバルなIB業務の拡大を目指すという。

米州では同時に人員も増やす方針だが、何人体制にするといった「ターゲットを決めているわけではない」(奥田氏)。これまで過去4年間で人員数は1.7倍になっている。

<成長の基本はオーガニックで>

野村はグループ全体の収益を拡大し、2020年3月期にEPS(1株利益)を100円にする目標を掲げている。15年3月期は60.03円だった。

今後の成長は、大型の買収で達成するというより、オーガニックを基本路線とする方針だが、グループCOOの吉川淳氏は「これからチャンスがあれば、マネジメントとしては真剣にとらえ、アクションを取らねばならない。動くときは動く」と語った。

*内容を追加します。

(江本恵美)

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