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焦点:欧州株の下落基調は妥当か、第4四半期企業決算で検証へ

2019年01月24日(木)08時00分

[ロンドン 18日 ロイター] - 欧州株はここ数カ月、景気減速や企業収益の伸び鈍化を巡る懸念を背景に下落し、昨年第4・四半期のストックス欧州600指数<.STOXX>は6年ぶりの低調な成績となった。

これからの欧州企業の第4・四半期決算発表では、そうした値動きが妥当だったかどうかが検証されることになる。投資家は、結果次第で株価の変動がさらに大きくなる展開も覚悟している。

第4・四半期企業収益に対する期待度は既に低くなっている。I/B/E/Sリフィニティブによると、ストックス欧州600構成企業の1株当たり増益率は6%となる見通し。前期および2017年第4・四半期の半分以下にとどまり、エネルギーを除いた増益率は3.9%とさらに下振れてしまう。

昨年11月時点まで増益率見通しは13%で推移していたものの、その後欧州や中国で想定外にさえない指標の発表が相次ぎ、アナリストは予想の下方修正を迫られた。

株式ストラテジストは、各企業が今年の業績見通しを引き下げる事態にも備えている。バークレイズの欧州株戦略責任者は、貿易摩擦やドイツの自動車セクター、イタリアと英国、米国の政治情勢など多くの分野から緊張感がもたらされているので、企業収益にどう反映されたか、株価下落が正しかったのかを確かめる形になるだろうと述べた。

また一部の市場関係者は、収益見通しがなお楽観的過ぎるとみている。ゴールドマン・サックスの欧州株戦略責任者シャロン・ベル氏は、第4・四半期増益率が4%になってもおかしくないと予想。「われわれとコンセンサスの大きな違いは、コンセンサスが利益率を横ばいかやや上昇と想定しているのに対してわれわれは若干下がるとみている点にある」と説明した。

年初にアップルが売上高見通しを引き下げて市場にショックをもたらした影響で、投資家は常にも増して業績下振れに神経をとがらせており、株価の反応は普段以上に大きくなりかねない。

リーガル・アンド・ジェネラル・インベストメント・マネジメントのグローバル株式ストラテジスト、ラーズ・クレッケル氏は「企業業績に関する不安感は高まっている。市場参加者が見境なく売りを出すスピードはより速くなるだろう」と述べた。

特に企業業績関連ニュースについて、それが良くても悪くても敏感に反応しそうな主要株式市場の1つはロンドンだ。英国の合意なき欧州連合(EU)離脱に対する懸念が強まっているので、先行きに関するコメントは非常に注目されるだろう。

実際、9日にいち早く通期の業績が堅調になるとの見通しを公表した英住宅建設会社テイラー・ウィンペイは、それまでに期待度が相当下がっていた分、ポジティブサプライズと受け止められて株価が一時2年半ぶりの高値をつけた。住宅建設セクターは、ブレグジット(英のEU離脱)がもたらす各種変動の打撃を最も受けやすいとみなされてきた。

欧州株のバリュエーションの相対的な低さも、ちょっとした改善の兆しが見えれば投資家の資金回帰を促す力になるだろう。

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの1月調査では、欧州株が過小評価されていると答えた機関投資家の割合は39%と、16年2月以来の最高水準に達した。

EPFRのデータを踏まえると、18年に欧州株ファンドから流出した資金は計720億ドル超と、他のどの地域よりも多く、今年に入ってからも流出は続いている。とはいえ、1月第1週の流出額は20億ドルと、米国の150億ドルを下回った。

最終的に資金流入に転じるかどうかは、今後数週間の欧州企業の業績内容に左右される面が大きい。

(Josephine Mason、Helen Reid、Danilo Masoni記者)

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