コラム

カタルシスな総選挙後の現実

2009年08月31日(月)11時14分

バラ色の世界 鳩山由紀夫は獲得した過半数議席を使いこなせるか(8月31日) Issei Kato-Reuters


 民主党が真の意味で歴史的な勝利を果たしたが、いま言うべきことは極めて少ない。

 結局サプライズはなかった。総選挙の結果は日本のメディアが予測した通りだった。有権者は総選挙までの数カ月間、自民党はもう下野すべきだと意思表示していた。そして投票日になってもひるむことなく自民党にノーを突き付けた。役立たずはついにお払い箱になったのだ。

 予想どおり自民党の何人かの大物が敗北したが、数人の著名な改革派議員──塩崎恭久、中川秀直、石原伸晃、河野太郎──は議席を守った。麻生太郎は日曜日夜の早い時間に党総裁として辞意を表明し、後継者をめぐる争いに道を開いた。総裁選の日程によっては争いは長引くかもしれない。自民党は野党になる際、党の構造を改革する必要があるだろう。民主党の内部構造を研究するのだろうか。

 民主党は300議席超を獲得した。どのような定義に照らしても尋常ならざる勝利だ。獲得した過半数で何をしてくれるのか、国民は注視している。民主党が再び有権者の審判を仰ぐまで、あと約1年。来年の参院選はあっという間にやって来る。

 国民の期待は必ずしもマニフェストの具体的項目に関するものではなく、もっと総合的なものであることを強調しておきたい。民主党政権は目に見える「何か」をする必要がある。日本を新しい方向に向かわせるために少なくとも一歩踏み出したことを有権者に示さないといけない。ご存じのとおり、鳩山が過半数の議席を駆使する能力に私は多くの疑問を抱いている。もちろん、私の見方が結果的に間違っていたとしたら結構なことだ。

 今回の総選挙は新たな疑問をいくつも突き付けたが、その答えは時間が経過しないと出ない。この選挙はカタルシスだった。民主党が圧勝すると分かっていても、開票結果はやはりエキサイティングだった。しかし、これから困難が始まる。

[日本時間2009年08月31日(月)01時03分更新]

プロフィール

トバイアス・ハリス

日本政治・東アジア研究者。06年〜07年まで民主党の浅尾慶一郎参院議員の私設秘書を務め、現在マサチューセッツ工科大学博士課程。日本政治や日米関係を中心に、ブログObserving Japanを執筆。ウォールストリート・ジャーナル紙(アジア版)やファー・イースタン・エコノミック・レビュー誌にも寄稿する気鋭の日本政治ウォッチャー。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ネクステラ、グーグルやメタと提携強化 電力需要増

ワールド

英仏独首脳、ゼレンスキー氏と会談 「重要局面」での

ビジネス

パラマウント、ワーナーに敵対的買収提案 1株当たり

ワールド

FRB議長人事、大統領には良い選択肢が複数ある=米
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 7
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    死刑は「やむを得ない」と言う人は、おそらく本当の…
  • 10
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story