コラム

自民改革派は離党するのか

2009年07月14日(火)19時10分

臨戦態勢 都議選での自民大敗が分かった直後、麻生首相は解散・総選挙を決断した Kim Kyung-Hoon-Reuters


 総選挙の日程を8月30日まで引き伸ばす麻生太郎首相の決断は、その日まで自民党内の政治方針をめぐる戦いが続くことを意味する。7月21日に解散した場合、8月18日の総選挙公示までには27日もある。現憲法下では過去最長の期間だ。これまでの最長は前回05年の総選挙のときの21日間だった。

 そしてこの間、麻生と自民党も試練にさらされる。最初の試練は、民主党など野党陣営から衆議院に出された内閣不信任決議案と参議院に提出された首相問責決議案だ。野党側はおそらく自民党からの離党を考えている議員にその機会を与えたいと考えている。

 都議選直後に麻生が解散を決断したことで、麻生は明らかに党内の「麻生降ろし」の動きを封じ込めた。彼ら改革派としては当然、麻生を退陣させて新総裁を選ぶ時間が欲しかったはずだ。14日には不信任決議案と問責決議案の採決もあり、改革派は麻生に対抗する決定的な行動をとれないだろう。

 それでも麻生と自民党は、改革派の大量離党に直面するかもしれない。中川秀直議員は本当に離党する意志があるのか? 長崎幸太郎議員に続き、ほかの「小泉チルドレン」も無所属で立候補したほうが再選の可能性が高いと考えて離党するのか? そして渡辺善美議員と共に新党の立ち上げに加わるのか? 渡辺は自民党議員の離党組を受け入れるのだろうか?

■自民党は改革派を追い出さない

 もし改革派が離党したら、自民党は改革派をつぶす「刺客」候補の指名を検討しなければならなくなる。民主党にとっては、無所属の元自民党改革派の候補を相手にするほうが、同じ候補が反麻生のまま自民党に残って戦うよりも手強い敵となる。

 改革派が党の公約とは別に独自のマニフェストを打ち出しながら自民党に残って戦うのは可能だ。麻生の支持率は低いが、自民党を離れるより残るほうが利がある。選挙後の選択肢が増えることを考えれば、なおさらだ。

 皮肉なものだ。改革派は4年前、何人かの保守派の議員を党から追放しようと攻撃した。そのときと違うのは、今回は自民党指導部は改革派を党から追い出そうとはしないだろうということだ。どれだけ改革派が反麻生を打ち出し、麻生の評判を落とそうとも......。

 次の総選挙が自民党の終わりを告げるのだとしたら、これまた皮肉な話だ。戦後に政治思想がばらばらの保守派の各派閥が寄せ集まって結成された自民党。その初代総裁を務めた鳩山一郎の孫、鳩山由紀夫が民主党党首として首相の座に近づくことになる。

[日本時間2009年07月13日(月)17時42分更新]

プロフィール

トバイアス・ハリス

日本政治・東アジア研究者。06年〜07年まで民主党の浅尾慶一郎参院議員の私設秘書を務め、現在マサチューセッツ工科大学博士課程。日本政治や日米関係を中心に、ブログObserving Japanを執筆。ウォールストリート・ジャーナル紙(アジア版)やファー・イースタン・エコノミック・レビュー誌にも寄稿する気鋭の日本政治ウォッチャー。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがイラン再攻撃計画か、トランプ氏に説明へ

ワールド

プーチン氏のウクライナ占領目標は不変、米情報機関が

ビジネス

マスク氏資産、初の7000億ドル超え 巨額報酬認め

ワールド

米、3カ国高官会談を提案 ゼレンスキー氏「成果あれ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 6
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    ウクライナ軍ドローン、クリミアのロシア空軍基地に…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story