コラム

<衆院選>それでも日本人は新自由主義を選んだ

2021年11月01日(月)13時48分

立憲民主党や共産党、社民党、れいわ、そして国民民主党も、それぞれ自民党以上の分配政策を打ち出していた。給付金や学費軽減、教育機関への積極投資、減税などだ。しかし、有権者にはそのどれもが響かなかった、響いたのは維新のコストカット・弱肉強食路線だったのだ。

もちろん日本維新の会は、依然として「野党」のままだ。しかし、もし維新が自身の政策を実行できたとするなら、率直にいえば、富裕層や有能な人間にとっては利益があるといえるだろう。他方で多くの市民にとっては、それは生活の質を改善するものではなく、弱者やマイノリティにとっては今まで通り、誰の手も差し伸べられない政治となる。弱者やマイノリティに手を差し伸べようと訴えた政党は敗北したのだから。

今回、維新に票を投じた人々が(あるいは他の党に票を投じた人々、そして、しなかった人々が)、どのような理由でそうしたのか私は知らない。今後、投票データの分析が行われるのだろうが、現時点では何もわかっていない。しかし、どのような実情が存在しようと、選挙結果全体から導かれる政治的帰結は、「それでも日本人は新自由主義を選んだ」ということなのだ。

プロフィール

藤崎剛人

(ふじさき・まさと) 批評家、非常勤講師
1982年生まれ。東京大学総合文化研究科単位取得退学。専門は思想史。特にカール・シュミットの公法思想を研究。『ユリイカ』、『現代思想』などにも寄稿。訳書にラインハルト・メーリング『カール・シュミット入門 ―― 思想・状況・人物像』(書肆心水、2022年)など。
X ID:@hokusyu1982

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