コラム

東京五輪の「国際公約化」は日本政府の自作自演

2021年06月21日(月)10時11分

感染者数や死亡者数が増加する可能性は現実的に高い。東京の感染者数は、緊急事態宣言解除以前からはっきりと下げ止まり・再度の増加可能性を示唆していた。緊急事態宣言が解除された都道府県では、週末の繁華街への人出が増えた。デルタ株の増加が高齢者中心のワクチン接種効果を打ち消すならば、このままいけば2週間後の7月前半には再度の感染者急増およびそれに伴う医療の危機が予想される。

そのような状況下で、政府は「国際公約」を根拠に、無観客どころか観客を入れたオリンピック開催を示唆している。「安心・安全な形」の基準も具体策はなく、既成事実を積み上げることで開催反対論を断念させることに徹しているようだ。

具体的な感染対策がない観客を入れての開催、オリンピック観戦に生徒児童を動員する計画の継続、オリンピック関係者に対する検疫体制の不十分さ、通勤・通学や物流を犠牲にした人出の抑制対策、コロナ感染者用のホテルをオリンピック用にすること、飲酒の提供など関係者への特権的待遇、経理担当のJOC 幹部の自殺。オリンピックのニュースで聞こえてくるのは酷い内容のものばかりだ。

オリンピックが開催されてしまえば、政府はオリンピック期間中に何が起きっても、「感動」ですべてを上書きできると考えている。そのような思惑は、けして実現されるべきではない。7月23日まで一カ月。皆が理性的に考えるなら、まだオリンピックの中止は可能なのだ。

プロフィール

藤崎剛人

(ふじさき・まさと) 批評家、非常勤講師
1982年生まれ。東京大学総合文化研究科単位取得退学。専門は思想史。特にカール・シュミットの公法思想を研究。『ユリイカ』、『現代思想』などにも寄稿。訳書にラインハルト・メーリング『カール・シュミット入門 ―― 思想・状況・人物像』(書肆心水、2022年)など。
X ID:@hokusyu1982

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