コラム

ジンバブエ野党幹部がまた事故

2010年03月25日(木)15時50分

 モーガン・ツァンギライ首相の夫人が不審な自動車事故で死に、ツァンギライ自身も怪我をして震え上がっていたのがほぼ1年前。事故として片付けられたが、私がジンバブエで話を聞いた人々の多くは信じていない。

「事故」が起ったのは、ツァンギライが率いる野党・民主変革運動(MDC)が09年2月、宿敵ロバート・ムガベ大統領の与党と連立政権を樹立し、ムガベ独裁体制に終止符を打ってわずか数カ月後のことだった。そんな偶然があり得るだろうか。何かがおかしいように思えた。過去にも似たような暗殺計画の噂があったとなればなおさらだ。

 そして今日も事故があった。車に乗っていたのは、MDC事務局長で財務大臣のテンダイ・ビティだ。これも本当に事故なのか。

 もちろん、事故の可能性もある。道路には標識もなく、大型トラックはいつも荷物を積み過ぎているし、運転も乱暴そのもの。もともと事故は多い土地柄だ。

■独裁に戻りたいムガベの仕業?

 だが、ビティは前にも標的にされたことがある。接戦だった08年の大統領選挙中、ビティは国家転覆罪で逮捕されている(しかもこれが初めてではない)。

 ビティはいつもムガベ政権を声高に批判してきた。最近も、ムガベ率いる与党ジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線(ZANU-PF)が連立を覆す破壊工作を行っていると声明で非難したばかり。「われわれは汚い誘いに乗って自滅したりはしない。だが、ジンバブエの人々が嫌がらせや暴行を受けるのを座視するつもりもない」

 事故は本当に事故だったと思いたい。連立政権が崩壊すれば、ムガベ独裁に逆戻りしてしかねない。奇跡を起こすのは無理でも、せめて来年実施の話が出ている新憲法下の選挙はぜひとも実現してもらわなければならない。ビティ財務相の一日も早い回復を祈ろう。

──エリザベス・ディッキンソン
[米国東部時間2010年03月24日(水)10時32分更新]

Reprinted with permission from FP Passport, 25/3/2010. © 2010 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

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国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

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