コラム

米国籍アフガン大統領候補の勘違い

2009年07月09日(木)16時19分

 8月20日に行われるアフガニスタンの大統領選で、現職のハミド・カルザイ大統領の追い落としをねらうアシュラフ・ガニ元財務相はどうやら、ビル・クリントン米元大統領の選挙参謀として知られる民主党のストラテジスト、ジェームズ・カービルを雇い入れたようだ。この件に関するカービルのコメントは、いつもながら威勢がいい。


 「これは、世界でも長い間なかったほど重要な選挙になるだろう」と、カービルは7月7日にAP通信の電話取材に答えて言った。「人生で最も興味深い仕事になりそうだ」


 カービルが何を基準に「長い間」と言っているのかは定かでない。つい昨年も、極めて重要な選挙があったと思うのは気のせいだろうか。

 それはともかく、カービルはオバマ政権の許しを得たか聞かれていた。だが、彼が外国で働くのは珍しいことではない。これまでも18カ国で選挙参謀を務めてきた。

 より大きな疑問は、今のところ支持率が2~4%しかないガニが、カービルから何を得ようとしているかだ。確かにカービルは有能だ(もっとも最近はそれほど実績を上げていないが)。だからといって、彼にアフガニスタンの選挙の何がわかるというのだろう。アフガニスタンはイスラム国家の色彩が強く、反政府武装勢力タリバンとの戦いに明け暮れている。アメリカ大統領選では長年の経験を積んでいるといっても、それが本当に役立つのだろうか。

 おそらくガニは、クリントンの側近だったカービルなら、バラク・オバマ政権の国務省にもコネがきくと期待しているのかもしれない。だが、ガニ自身のワシントンでの輝かしい経歴──世界銀行で働き、国家効率研究所を創設し、何年も前に米国籍を取得──を考えると、アメリカの国務省に取り入ろうとするより、アフガニスタン南部にあるタリバンの本拠地カンダハルの有権者を取り込んだほうがよほど効率的ではないのか。

──ジョシュア・キーティング
[米国東部時間2009年07月08日(水)15時24分更新]


Reprinted with permission from FP Passport, 8/7/2009. © 2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

3メガバンクなど、ステーブルコイン共同発行・検証へ

ワールド

中国レアアース輸出、10月は前月比9%増 4カ月ぶ

ワールド

スイス石油商社ガンバ―、露ルクオイルの資産買収提案

ワールド

トランプ氏、中央アジア首脳と会談 重要鉱物確保へ連
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 5
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの…
  • 6
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 9
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 10
    約500年続く和菓子屋の虎屋がハーバード大でも注目..…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story