コラム

垢すりで乳がん発見? 韓国乳がん学会と沐浴管理士連合会が協力

2016年04月09日(土)11時30分

ピンクスクラブキャンペーン



「欧米では夫や恋人が乳がんのしこりを見つけるケースが多いが、韓国では垢すりおばさんが乳がんをみつける」、という話は、韓国ではもう十数年も前から都市伝説のように存在した。乳がん学会のピンクスクラブキャンペーンによって、それが伝説ではなく事実であることが判明した。

 乳がん患者をサポートする団体「韓国乳がんセンター」のホームページにある患者の投稿を検索してみると、垢すりおばさんのおかげで乳がんを早期発見できた、という事例は、いくつもあった。過去の記事を検索してみると、「乳がんを見つけてあげたことが2回ある」という垢すりおばさんのインタビュー記事も登場した。

 韓国で話題になった、韓国保険福祉部(部は省、医療と福祉の政策を担当する省庁)のエリート官僚が自身の乳がん闘病記を書いた本にも「垢すりおばさんにしこりがあると言われたが無視した。その後また別の垢すりおばさんにもしこりがあると言われた。また無視した。それから気になって検査をしてみると乳がん、すでに3期だった。垢すりおばさんに言われたときに早く検査をすべきだった」という内容が登場する。

 韓国乳がん学会のユン・ジョンファン前会長は、「乳がんの自己検診は横になって腕を頭の上にあげて胸を触り、しこりを確認するように指導する。垢すりはゆったり横になって石鹸を付けて胸に触るのでしこりをみつけやすい環境であるのと、垢すりおばさん達の豊富な経験とノウハウが重なりしこりを発見する可能性が高くなっているのかもしれない」と話した。

 韓国保険福祉部のデータによると、2012年時点で韓国の女性がかかりやすいがんは1位が甲状腺がん、2位が乳がん、2位が大腸がんだった。乳がん学会は、韓国女性に多いのが乳がんだけに、垢すりおばさんに頼ってでも早期発見で生存率を上げることを狙っている。乳がんのもっとも効果的な治療法は早期発見、早期治療しかないという。

 韓国に遊びに来たらぜひ垢すりを体験してほしい。そして乳がん検診も忘れずに。

プロフィール

趙 章恩

韓国ソウル生まれ。韓国梨花女子大学卒業。東京大学大学院学際情報学修士、東京大学大学院学際情報学府博士課程。KDDI総研特別研究員。NPOアジアITビジネス研究会顧問。韓日政府機関の委託調査(デジタルコンテンツ動向・電子政府動向・IT政策動向)、韓国IT視察コーディネートを行っている「J&J NETWORK」の共同代表。IT情報専門家として、数々の講演やセミナー、フォーラムに講師として参加。日刊紙や雑誌の寄稿も多く、「日経ビジネス」「日経パソコン(日経BP)」「日経デジタルヘルス」「週刊エコノミスト」「リセマム」「日本デジタルコンテンツ白書」等に連載中。韓国・アジアのIT事情を、日本と比較しながら分かりやすく提供している。

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