コラム

「発展した国は明るく見えるように」「紛争も『光』として確認」 油井亀美也宇宙飛行士が語る地球10年の変化、アルテミス計画への思い

2026年04月10日(金)22時05分

2. 10年を経て宇宙から見た地球の違い

写真撮影が趣味で天体が大好きな油井さんはISS滞在中、余暇の多くの時間を窓から宇宙を眺めて過ごしました。

10年前の滞在と比べて窓から見える地球の姿は変わったのか、尋ねてみました。

「夜景を見ると10年前よりも発展した国は明らかに明るいです。台風の写真を撮ったのですが、前回よりも勢力の強い台風が多かった感じがします。それから、人間の仲が悪い部分も宇宙から見えてしまうので、悲しくなりました」


油井さんによると、紛争地域の「光」(爆撃や戦火)は宇宙から明らかに確認できるそうです。貧富の差も「光」(電灯)として見えます。

「相互を助け合う文化が広がれば、自分が(宇宙から)見ている『仲が悪い部分』が減っていくのではないかな、などと色々なことを考えました。食事の時にクルー同士で、『各国によって報道が違うのは、どっちが正しいとか悪いとかではなくて見方の違い。両方の考え方の真ん中くらいのところに解決策があるのだろうね』なんて話もしていました」

3. 撮影した数十万の宇宙写真と動画を整理して公開

ところで、今回のミッション中の余暇時間で油井さんが撮影した写真や動画は数十万にも及びます。

宇宙を走るレモン彗星、月明かりを受ける富士山、オーロラなどの写真はX(旧twitter)に投稿され、私たちにも神秘的な美しさを共有してくれました。

一方、台風や消滅危機にあるアラル海の写真は、CONSEO(衛星地球観測コンソーシアム)や防災科研と協力して研究者の状況解析に役立てられています。

さらに25年9月8日未明(日本時間)の皆既月食には、「宇宙から見た月食の写真」がSNSに投稿されました。月の写真は、宇宙で撮影したものの中でもとくにお気に入りとのことです。

「うまく撮るために様々な調整をして、クレーターなどを狙い通りに撮影できたときは嬉しかったです。やっぱり月は人類の次の目標ですからね」

4. アルテミス計画への思い

日本人2人の月面着陸が日米政府間の取り決めで約束されている「アルテミス計画」は、NASAが主導する国際有人月探査計画です。月に降り立つ日本人は、油井さんを含めて現在6人いるJAXA宇宙飛行士から選ばれます。

2回の宇宙飛行を終えてベテランの域に入り、前職が航空自衛隊のテストパイロット(航空機の飛行データを取り設計を評価する飛行士)でメカに強い油井さんが語る「月飛行への思い」は、とても注目されています。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

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